スタイリッシュなデザインに思わず引き込まれてしまうホテルがある。その色合いや、壁に描かれたものに自然と興味がわくが、そこにその土地ならではの歴史や設計者の深い思いが込められているケースが少なくない。知れば知るほど面白い、しゃれてひねりのあるデザインの旬な3つのホテルをご紹介しよう。
まずはマリオット・インターナショナルのラグジュアリー・ライフスタイルブランド「W」の日本第1号「W 大阪」。大阪市のメインストリート、御堂筋に面した心斎橋にある。ハイジュエリーやブランドショップが立ち並ぶエリアにほど近く、真っ黒な27階建てのビルがひときわ目を引く。デザイン監修を手がけたのは大阪出身の世界的建築家、安藤忠雄氏だ。

外観はミニマルな黒い建物だが、御堂筋側のアライバルトンネルが黒い廊下と対照的な色鮮やかなアーチで別世界へと誘う。リビングルームと呼ばれるロビー階のバーには、提灯(ちょうちん)を思わせる照明がシャンデリアのように下がり、漫才のステージをイメージした真っ赤なインテリアも。そういえばホテルのそばには仁徳天皇が主祭神という難波神社や、繁華街・ミナミにお笑い劇場もある。
外観の黒とインテリアのコントラストは、商人の町、大阪・南船場の旦那衆の羽織にヒントを得たという。江戸時代、幕府がぜいたくを禁じる風潮の中、一見地味な黒の羽織の裏地を派手にし、まとったのは大阪商人たちの心意気だったのだろう。ホテル1階の鉄板焼きレストラン「MYDO(まいど)」は、W 香港を手がけた森田恭道氏と国際的に知られるイラストレーター、黒田征太郎氏がコラボし、デザイン。共に関西生まれの個性豊かなクリエイターの化学反応がさく裂したかのようなユニークな店内になっている。

窓を広くとった客室(全337室)にも仕掛けが施されている。夜になれば道頓堀のネオンからインスパイアされたストライプの光が浮かぶ。そして、黒のクローゼットは開けてびっくり(泊まってのお楽しみ)。羽織の話を思い出させてくれる。