こうした姿勢は、役者という職業に限らず、どのような職種においても、キャリアアップを目指すのであれば必要とされるものであるように感じます。

どのような業界でも、どのようなビジネスであっても、経験を積めばある程度までのレベルにはたどり着けるものです。

例えば、売り上げ目標などが掲げられている場合には、その数字に到達することにより、ビジネスとしての合格点を得られます。プレゼンテーションであれば、取引先との契約にたどり着くことにより、プロジェクトやイベント業務であれば、問題なく無事に遂行できれば、評価されるでしょう。

多方面から必要とされる仕事人に

しかし、現時点における自分自身の知識、人脈、実力で十分であったとしても、今いるステージのままだと、パフォーマンスはやがて頭打ちになってしまいます。

特にいま、ビジネス社会はデジタルトランスフォーメーション(DX)化という大きな変革期を迎えています。人工知能(AI)が本格的に導入されるなど、私たち1人ひとりの役割と担務が日々変化し続ける時代なだけに、次のステージを目指す姿勢が従来以上に求められます。

すなわち、合格点の先の景色を見たいビジネスパーソンであれば、その向こう側に行くという高い意識を持つ必要があります。

磯村さんは『情熱大陸』で、自身について「たぶんカラカラなんでしょうね。中身が」と語り、自己満足することなく、自分自身をかたくなに戒め続けていました。

自らを繰り返し戒め、正解のないゴールに向かって、納得できる答えを求め続けている磯村さん。だからこそ、結果的に、多方面から必要とされる仕事人になれているのだと感じます。

かつて、シャネル創設者のココ・シャネルは次のように言いました。「20歳の顔は自然からの贈り物。30歳の顔はあなたの生き様。50歳の顔はあなたの功績・価値なのよ」

9月に29歳になる磯村さんの表情や演技を見ていると、自然からの贈り物を活(い)かすことにとどまらない、生き様そのものが顔つきや仕事ぶりに反映されているように感じます。

今後、役者として実績をさらに積んでいくなかで、どのような功績と価値がにじむ50歳の顔つきに向かうのか――。その変遷を観察しながら、私たちも合格点の向こう側に行くために、正解を求め続ける努力をしていきたいものです。

鈴木ともみ
 経済キャスター。国士舘大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。JazzEMPアンバサダー、日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。地上波初の株式市況中継番組を始め、国際金融都市構想に関する情報番組『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE TV)キャスターを務めるなど、テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへ出演。雑誌やニュースサイトにてコラムを連載。近著に「資産寿命を延ばす逆算力」(シャスタインターナショナル)がある。

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