アニメ「SonnyBoy」 学校が異次元漂流、中3の群像劇
7月より放送・配信中のオリジナルテレビアニメ『Sonny Boy』。いつもと変わらないはずだった夏休み――中学3年生の長良、希、瑞穂、朝風ら36人は、登校日に学校ごと異次元に放り出され漂流生活を余儀なくされる。超能力に目覚める生徒も現れるなど突然変わってしまった謎だらけの日常を前に、少年少女は何を思い、どう行動し、どこにたどり着くのか。
本作で監督と脚本、原作を務めるのは『ワンパンマン(1期)』の夏目真悟。
オリジナルアニメ制作にあたり、「自分の好きなものを落とし込んでいった」と言い、「子どもの頃読んだ『十五少年漂流記』『トム・ソーヤーの冒険』といった冒険小説の系譜を入れつつ、中学生くらいの少年少女による青春群像劇を作りたいと思った」と話す。
「少年が成長する物語の始まりと終わりの過程、ひと言で言うと"通過儀礼"を描きたかったんです。15歳くらいって人格形成上1番多感な時期で、大人以上子ども未満の変換点でもあると思っているので、ずっとやってみたかったんですよね」
実際に15歳前後の学生たちにアンケートやインタビューを行い、今どきのリアルな声も反映。さらにアニメでやるからこその超能力といった様々な要素を盛り込み、シナリオを完成させたと言う。
「社会のルール、不条理とも言えるそれらを前にキャラクターたちがどういう選択をするのか。少年と少女の出会いの物語だと感じる人も、友情や特殊空間での超能力に興味を引かれる人もいるかと。たくさんの要素の断片を切り取りながらつなげて、最後にそれが1つにまとまっていく。いろいろな感じ方がある作品だと思います」
キャラクターデザインは江口寿史
「言いたいこと、やりたいことはできたし、映像もイメージに近いものに仕上がっている」と夏目監督。キャラクター原案にはマンガ家でイラストレーターの江口寿史。「オリジナルは作品の象徴となるキャラクターデザインが重要なので江口さんにお願いしました。どこか懐かしさと新しさに加え都会感もある江口さんだからこそのタッチで一発でこれだ!と。作品の格も上げてもらえました」
また主題歌はアニメ作品初参加の銀杏BOYZ。通常の劇伴は作らず9組のアーティストが各話のイメージに合わせて曲を書き下ろすという斬新な手法が取られた劇中音楽にも注目だ。
そして、映像で特に力を入れているのが手描きによる背景美術だ。「筆のタッチで空気感や感情を表現しています。例えば空の色はグラデーションをつけず水色だけで描いているんですが、独特の紙の質感で味わいが出る。あと教室外の背景の黒は、ゼロ黒といって無音が数秒続くと放送事故になってしまう色だったり、逆に完全な白を使ったり、色にはこだわっていますね。ピンボケを使わずに、背景のディテールに合わせて人物を描くなど昔のセル時代の手法も取り入れているので、ライバルは『サザエさん』でしょうか(笑)。結果、今の多くのテレビアニメとはかなり違う映像になっているかなと。テレビをザッピングしているときに『Sonny Boyじゃない?』となればいいなと思ってます」
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2021年8月号の記事を再構成]
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