日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/8/25

しかしこの謎は2012年に解けた。フィリピンメガネザルが、実際に超音波(人間の可聴域を超えた高い周波数の音)でコミュニケーションしていることが明らかになったのだ。結局のところ、ストレスに起因するこの行動は、無音ではなかった。それは、犬笛のようなものだったのだ。

観光客でも、どこを探すべきかさえ知っていれば、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで近危急種(near threatened)に指定されている、夜行性のフィリピンメガネザルを見ることができる。

「夜は狩りに出かけますが、その後同じ木に戻ってくるのです」とメヒア氏は話す。

悲しいかな、この習性が、フィリピンメガネザルを危険にさらしている。食用やペット取引のために捕まえようとする人たちも、彼らをかなり容易に見つけることができるからだ。

フィリピンメガネザルの邪魔をすることなく、彼らの姿を見るために重要なのは、正式なガイドを予約することだ。メヒア氏は、ボホール島でフィリピンメガネザル・野生生物保護区を運営するフィリピンメガネザル財団を推奨している。

タマラオ、力は強いが、体は小さい

フィリピン人は、タマラオ(Bubalus mindorensis)が地球上で最も人気が高く、最も愛らしい動物の1つだと考えている。だが、フィリピン以外では、ほとんどの人は、力は強いが体は小さいこのスイギュウについて聞いたことさえないだろう。

タマラオは、ウシ科のフィリピンの在来種で、ミンドロ島にのみ生息する。光沢のある黒毛、後ろ向きに生えた角は見事だが、体高は幼稚園児ほどしかない。だが、その背の低さにだまされてはいけない。気性が荒いことで有名で、侵入者に対してすぐに角を振り回す。

撮影した2018年当時、飼育下に唯一残るタマラオの個体だったカリバシブ。その後、2020年10月に老衰で死亡した。ミンドロ州のタマラオ遺伝子プールファームで撮影。タマラオ保護プログラムでは、現地の部族民の人たちを、レンジャーや動物を探索するトラッカーとして雇用し、それが密猟の減少につながった(PHOTOGRAPH BY JES AZNAR, GETTY IMAGES)

「本物の野生動物なのです」とメヒア氏は話す。「もし彼らに木に追い詰められたら、やるべきことは横にジャンプすることだと、レンジャーに言われたことがあります。タマラオは突進してくるからです」

タマラオの肉はいまだに一部のハンターにとっては価値が高く、また、ウシや他の家畜からの病気によっても大打撃を受けた。野生に残る個体はわずか600頭のみで、IUCNのレッドリストでは近絶滅種(critically endangered)に指定されている。

「それでも、フィリピンを訪れれば、イグリット・バコ山国立公園で野生のタマラオを見ることができます」と、タマラオ保護プログラムのコーディネーター、ニール・アンソニー・デル・ムンド氏は話す。

もちろん、タマラオは安全な距離からのみ観察することが望ましい。

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ミンドロワニ、世界一レアなワニ