この経験が彼ら全員のこれからの音楽人生に活きてほしい

「この合宿形式ほど有意義な時間はなかったんじゃないかな。ダンス、歌、ボイストレーニングなど常にトレーナーが合宿所内にいるし、もちろん僕もいる。聞けば答えてくれる人がいるし、不安や悩みを聞いてくれる人もいる。朝から基礎練習を積んで、1人1人の課題も明確にある。“やるべきことが常にある”というこの時間があったから、伸びる人は本当に驚くほど伸びました。

合宿の中で誰もが1度は『こんなアーティストになりたい』という絶対的な目標を見失うことがあったでしょう。『まだ落ちたくない』という思いを抱えたり、最終メンバーに残れるかもしれない安心材料を探してしまうこともあったと思います。でも、それをやればやるほど自身の成長が止まってしまうものです。そういう事柄に随時対処していけたので、合宿期間はみんなが成長し続けられたし、僕も教えていて本当に楽しかった。

ただ、彼らの実力の成長曲線を大きく伸ばしてあげることも重要でしたが、それと同等以上に大切にしたのが心の持ちようでした。彼らを悩ませてしまう危険をはらみながらも、個々の明確な意志やアーティシズムに向き合ってもらうことは本当に重視した部分。デビューしてからの不安や迷い、焦りは、今の比ではありません。自分がどんなアーティストであるかの指針、スタンス、アティテュードが備わっていないままに踏み出すのは非常に危険なことです。

デビュー後は他のボーイズグループの活躍やかつて同じスクールにいた子の活躍に焦りを感じたり、世間の心ない言葉に傷つけられたり、思うような活動ができない不安など、様々な雑念や邪念、自分で自分に課してしまうプレッシャーなどが生まれることもあるでしょう。

そんなとき、自分の中に指針があることで、それに対抗できる強さが持てる。僕ができるメンタル面でのサポートは、問題解決の手段を一緒に考えることくらい。その人にとっての正解や理想が見えないと、一緒に考えることすら難しくなってくると思います。

今は、自分がどういうアーティストになるのか、どういうアーティストとしてステージに立ち続けたいかのビジョンを明確にして、そのための成長にのみ時間を費やしてほしい。それを見せてもらったうえで、組み合わせの正解を導き出すのが自分の役割。その関係値がベストなのではないかと思います。

例えば彼らが自ら模索するなかで、海に行くのではなく山のほうが向いているとなったならばコンバートの相談もするかもしれません。やはり、彼らの個性をグループにはめるために矯正することはしたくないですから。最後に残る残らないは彼らの人生において大きなことではあるんだけど、合宿に参加したそれぞれに対して、今後の音楽人生にとってプラスになってほしいと思っているし、どの道まだ人生は続いていくということは覚えておいてほしいと思っています」

SKY-HI(日高光啓)
 1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動する。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。「THE FIRST」のテーマソング『To The First』が配信中。

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(ライター 横田直子)

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