エース「夏リュック」が好調 背面の隙間で蒸れを防ぐ
両手を自由に使えるようになるビジネスリュックは通勤で重宝するものの、夏の暑い日などは背中が蒸れがちになるのが難点だ。こうした悩みを解決する新商品「ラパックエアV2」をエース(東京・渋谷)が発売。その効果はデータで実証済みだという。
ビジネスリュックを背負うと背中が熱くて蒸れる。とりわけ夏に顕著な悩みで、自転車通勤者などは春や秋でも不満を感じている。リュックのこうした弱点の解決を目指して開発されたのが、エースの「ラパックエアV2」だ。2021年6月1日の発売前から世間の注目を浴び、バッグ販売店からの引き合いも強かった。ラパックエアV2には先代モデル「ラパックエアV」が存在し、それと比べて発売1カ月の売り上げは、販売数ベースで約150パーセントと好調な売れ行きを見せている。
先代のラパックエアVが発売されたのは、2年前の19年。「背中の熱さを解消するために、消費者や社内から様々なリクエストが寄せられていました。中には『宙に浮くリュックを作れないのか』といった要望など、むちゃと思えるものもありましたね」。こう話すのは、エースの国内商品生産部R&D課でチーフを務める若生然太氏だ。
もともとアウトドア向け商品の世界では、背中に接触する部分に隙間をつくって通気性を良くする「エアベンチレーション機構」を持たせたリュックがあった。先代のラパックエアVは、それをビジネス向けに応用して開発をスタートさせたという。
ただ、難点があった。エース社内には「バッグは頑丈でなければならない」という考えが根強く、その基準をクリアさせた結果、ラパックエアVはかなり重くなってしまったのだ。
エアベンチレーション機構自体に対する反響はとても良かったため、今回の「ラパックエアV2」では構造を見直し、軽量化を図った。「芯材を見直すこと、また背中からバッグ本体が離れ過ぎると荷物を重く感じてしまうため、その調整を中心に開発しました」と若生氏。
前モデルにあった、背面部分が湾曲していて平らなものが入れにくいという問題も解決した。ピアノ線の芯材でフレームを作ることで、背面が平らになるようにして、本体と背中との距離が最適になるように見直している。
約23パーセント向上した放熱性
前モデルを改良し、今回のラパックエアV2はどう仕上がったか。熱を発生する特殊なマネキンを使って、どのくらい放熱されているかを定量的に評価したところ、15分後の背部の放熱性が、背面がフラットな一般的なリュックに対して約23.3パーセント向上したという。
ラパックエアV2を実際に背負ってみたところ、確かに蒸れないし、強く吹いた風が背中を通り抜けてとても涼しかった。もちろん自転車に乗ったときにも快適さを感じられるが、そういった体感レベルだけではなく、数値でも実証済みという点で信頼性が高まる。
使い勝手の面では、ノートパソコンと書類を分けて入れられる2つのメインコンパートメントと、前面上下に用意された、大きめのマチ付きのファスナーポケットに注目だ。後者はバッテリーなどのコロンとした小物も収納できる。「カッチリし過ぎず、しかしビジネスバッグらしい形になるようにデザイナーと相談しながら細部を詰めていきました」(若生氏)とのことで、扱いやすいリュックにもなっている。夏のビジネスリュックの新定番になりそうだ。
すべての移動を旅と捉える
ビジネスバッグの主流となったリュックタイプだが、それはここ数年の話だ。
「ビジネスパーソンはバッグを手に提げるもの」という考えがまだ当たり前だった時代に、エースは既に3Wayタイプなどのビジネスリュックを開発。他にも、背中のパッドやストラップなど体に当たる部分が洗濯できる「WPパック」、体の前で抱えたときにも快適に使えるベストセラー「ガジェタブル」、肩の負担を軽くする「ランバームービングシステム」など、数多くのビジネスリュックを手掛けてきた。今回のラパックエアV2に見られる、通勤時の快適さを考慮した設計も同社ならではと言える。
エースは、「すべての移動を旅と捉え、その旅を快適にする最適なカタチを提供する」をブランド全体のコンセプトにしている。ビジネスバッグの企画に携わるエースMD統括部次長の吉原勇一氏は、「消費者が何となく感じている不便さや不具合に対して、きちんと解決する製品を開発してきた。これからも半歩から1歩、2歩、先を行く製品を出していきたい」と話す。
(フリーランスライター 納富廉邦)
[日経クロストレンド 2021年7月21日の記事を再構成]
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