こんにちは、法政大学でキャリア論を教えている田中研之輔です。学生からはタナケン先生と呼ばれています!
さて、この連載では若手社会人、ファーストキャリアにフォーカスしていきます。社会人として3年前後を経過した皆さんは、基本的なビジネスマナーは習得し、会社・業界の特性や、仕事の進め方も理解されたことでしょう。
しかし経験を積んで仕事に慣れてきたからこそ、見えてくることもあります。私は法政大学に2008年4月に着任し、それから毎年、卒業生を社会へと送り続けてきました。毎年12~15人がゼミに所属し、社会へ巣立っていきます。ゼミの設立当時から私は「社会に出てからもつながるゼミ」であることを伝えており、現在、facebookグループには卒業生と現役生が200人以上在籍しています。
卒業生からキャリア相談を受けることもよくあります。そしてその時期は、だいたい社会人3年目を迎えた頃です。企業や個人の特性によって内容は様々ですが、大方の相談内容は以下のようなものです。
「業界の状況や会社の強みや課題もそれなりにつかめるようにはなってきました。ただ、このままでいいのか、成長できているのか、とこれからの自分のキャリアについて不安に感じるようになってきました。まだ3年目だし、このまま今の仕事に取り組んだ方がいいのでしょうか? それとも転職して、新たなキャリアを選択した方がよいのでしょうか?」
学部を卒業して社会人3年目をむかえるのは25~27歳ぐらいの年齢。仕事を覚え、少し俯瞰(ふかん)できるようになってきたからこそ、悩むのが社会人3年目なのです。しかし、相談する相手も機会も少なくなるのが社会人3年目です。
大学入学から就職先まではそれとなく親に相談しながら判断していたものの、社会人として独り立ちしてから親に相談するのは、はばかられるものです。大学はすでに卒業しているので、通常ですと教員に相談する機会もありません。また、キャリアの悩みや不安は職場への不満とも関連するので、同僚には相談しにくい現状があります。
もちろん親しい友人に、悩みを打ち明けることはできるでしょう。しかし的確なアドバイスができるほどの経験値はなく、キャリア相談の「壁打ち相手」としては、力不足なのです。
そこでこの連載は、ファーストキャリアとその先に悩む皆さんと共に、これからのキャリアついて考える機会にしていきたいと思います。実際に3年目前後の若手社会人へのインタビューも交えながら、キャリア論の知見からアドバイスを展開していきます。
まず1回目の今回、皆さんに伝えたいことは、キャリアの悩みは個別具体的ではあるものの、構造的な共通性を持っているという点についてです。
仕事の「その先」について考える癖を
例えば、入社3年目を迎えても、やりたいと思える仕事に取り組めていない、という悩みがあるとします。このとき、まずしなければならないのは、悩みを生み出す構造を解きほぐしていくことです。
(2)今の職場にやりたいと思える仕事はあるのか、ないのか?
(3)他の職場にはやりたい仕事があるのか?
まずこの3点に向きあいましょう。キャリアに関する不安は、ぼんやりと悩んでいるだけでは一向に解決しないのです。自分自身のキャリアのプロデューサーであるという視点を持ち、今、どのような状態でどう悩んでいるのかを徹底的に考えていくのです。
就活をしているときに、「自己分析」をしましたよね。しかし、その自己分析をこれからのキャリアと結びつけて考えることは、難しかったはずです。なぜなら、働いた経験がないからです。働くことや仕事についてのあなたのイメージや想像から判断するしかできなかったのです。