三國連太郎と不思議な師弟関係、食事中に始まった即席講義

――撮影現場での印象はどうでしたか。

「ショーケンは最初、緊張してガチガチでしたね。でも役者として勘がいいし、間の取り方がうまい。とても頭がいい俳優だなと感じました。『約束』や『雨のアムステルダム』の撮影では、いつも共演相手の三國連太郎さんと話し込んでばかり。3人で一緒に食事する際も、なぜか三國さんがショーケンに難しい話を始めるんです。チグリス・ユーフラテスのメソポタミア文明がどうしたとか、こうしたとか……。三國さんが学問を教えているわけ。ショーケンも素直だから、『すみません。僕、学校であまり勉強してこなかったので……』なんて言いながら、一生懸命に耳を傾けている。すっかり三國さんに心酔している様子でした」

ショーケンは三國さんに心酔していたという

――三國さんはショーケンを役者として高く評価していたようですね。

「そうみたいね。でも三國さんの息子の佐藤浩市さんもすてきな役者でしたよ。NHKドラマ(『続・続 事件 月の景色』80年放映)で母と息子の役で共演しましたが、目がきれいで爽やかな青年だった。私の一人娘とほぼ同世代なので『良い友達になってくれたらいいな』と思って、娘と一緒に料亭の個室で食事したこともあります」

ショーケンが招待した夕食会、勝新に「こじきじゃない」と反発

――仕事以外でもショーケンと交流はあったんですか。

「家が近かったせいか、私の横浜の自宅によく遊びに来ていました。私のことを『姉さん』と呼んでいたので、私も自分の弟というか、おいっ子みたいな感じで接していました。そんなショーケンがある日、『姉さんにいつも世話になっているからお礼がしたい』とキャンティ(東京都港区のイタリアレストラン)に招待してくれたんです。すると偶然、勝新太郎さんが5、6人の取り巻きを連れて店に入ってきて、『おお、ショーケン。一緒に飯食おうや。岸さんもご一緒にいかがですか』と声をかけてきた。ショーケンは少し戸惑っていたけど、そのまま合流することになりました」

「やがて食事が終わり、勝さんが全員の代金を当然のように払おうとしたら、ショーケンが突然、怒り始めたの。『勝さん、僕はこじきじゃない。今日は自分が姉さんを招待したんだから、会計は別にしてほしい』なんて言って、こちらがハラハラするくらいその場が険悪なムードになってしまった。最後はなんとか和やかな雰囲気で別れたけど、『へぇ~、ショーケンって、なかなか骨があるじゃない~』と感心しました」

次のページ
勝新の買い物にパリで同行、ただ者でない身のこなし