50周年の好機を生かし、デザインを一から見直す

通常なら、リニューアルした次のモデルはマイナーチェンジにとどまることが多いが、全面刷新の機会は意外に早く訪れた。20年に同社の「炊きたて」ブランドが50周年を迎えるため、次の「土鍋ご泡火炊き JPL-A100」をその記念モデルとして開発することになったのだ。これにより、「情報収集力のある若い開発者を多く抜てきするなどの思い切った開発が可能になった」(開発を統括した炊飯器ブランドマネージャーの岡本正範氏)

こうして開発された新モデルのJPL-A100には、明確な2つの変化があった。1つは従来のスタイリッシュなデザインから、釜や土鍋のイメージに近い丸みを帯びた形状になったこと。「前モデルのクールなイメージから、温かみややさしさを想起させるデザインに変更した。以前は製造しやすいデザインにする傾向がなかったとは言えないが、今回はフリーハンドで描かれたデザインを優先し、生産ラインに落とし込んでいった」(辻本氏)という。

例えば、背面から見た際に本体と蓋をつなぐヒンジが見えないように処理されている。これには「対面型のキッチンで使われることも想定して、360度どの方向から見ても質感が高く見えるようにした」(辻本氏)という意図がある。

もう一つの大きな変化は、上面の操作ボタンと液晶パネルだ。前モデルのJPG-S100は、タッチパネルとタッチセンサー式のボタンでほぼすべての操作ができた。このため、電源がオフのときにはボタン類が見えなくなっていた。デザイン的にはこちらの方がスマートだが、「店頭などで調査をしてみると、年配の方には『使いづらそう』と言われることがあった」(辻本氏)。

そこで新モデルでは、よく使う「炊飯」「予約」「取り消し」の3つは物理的なボタンとして独立させ、さらに液晶画面も従来の2倍に拡大。この画面サイズは他社製品と比べても大きく、使いやすさを強調するのに役立った。

左側の前モデル(JPG-S100)よりも右側の新モデル(JPL-A100)は液晶画面が約2倍、文字サイズは約1.5倍になった

この他、保温時に外気を取り込むことでご飯の香りや弾力を保つ「おひつ保温」や、50種類の米の銘柄に合わせて設定を自動変更する「銘柄巧み炊きわけ」などの新機能も搭載している。テレビCMでも、「『土鍋で炊いたご飯はおいしい』というメッセージを発したときに説得力がある、伝統と革新を感じさせる人」(辻本氏)との理由で市川海老蔵を起用した。

11代目 市川海老蔵を起用したCM

同社は、前モデルのJPG-S100でも「一合料亭炊き」機能などで中高年世帯の取り込みを狙っていたが、結果的には不十分だったといえる。新モデルにおいて、デザイン、ユーザーインターフェース、CMのすべてで、中高年世帯が受け入れられる施策を打てたことが、躍進につながったのだろう。

21年5月13日には、成果を上げたJPL-A100のデザインを継承しつつ、高温の蒸らしで甘みを引き出すなどの新機能を加えた最新モデル「土鍋ご泡火炊き JPL-G100」を発表(発売は21年6月21日)。21年下半期は、勢いを持続できるか真価が問われる。

21年6月発売の「土鍋ご泡火炊き JPL-G100」

(日経トレンディ 大橋源一郎、写真提供 タイガー魔法瓶)

[日経クロストレンド 2021年5月17日の記事を再構成]

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