在宅勤務の普及で住まいを見直す人が増えている。新築マンションで価格高騰や専有面積の縮小などが生じるなか、都市部で人気が高まっているのが、中古マンション。購入する際、特にどのような点に気をつけるべきなのか。不動産のプロにマンション選びの注意点を尋ね、より多くの専門家に支持されたものをランキングした。(ランキングは下に掲載)
新築の価格高騰で中古が人気に
人生最大の買い物の一つである住宅。住宅全体では「新築志向」が強いのが日本の住宅市場の特徴だが、都市部のマンションに関しては新築供給戸数が限られ、価格も高騰していることから、中古に目を向ける人が増えている。
特に首都圏マンションはここ数年、新築供給戸数を中古成約件数が上回る状況が続く。中古に割安さを求める人はもちろん多いが、それだけではない。最近の新築マンションは価格が高くなり過ぎるのを防ぐ狙いから「専有部を小さくしたり、共用設備を少なくしたりする例も目立つ。こうした物件を敬遠し、新築を十分購入できる経済力がある人が、あえて築浅の中古物件を選ぶことも増えている」(渕ノ上弘和さん)という。
ただ、新築と中古の住宅は税金や保証のルールが異なることは意外に知られていない。例えば、購入時の消費税。土地は新築、中古を問わず非課税だが、中古は個人から買う場合は家屋についても消費税はかからない。半面、購入後に税負担を軽減する住宅ローン減税は、個人から買う中古の方が減税の期間や上限額では制約がある。
購入前に発見できなかった問題は保証を徹底活用
購入の際に可能な限り目配りをしても、ときとして購入・入居後に重大な不具合に直面することもある。大手不動産会社が販売した新築や築年数が浅い中古物件でも過去数年、不適切な工事や欠陥などが断続的に発覚している。
特に未完成の状態で購入契約を進めることになるのが一般的な新築マンションの場合「購入前に一般的な人が欠陥などをすべて把握するのはかなり難しい」(さくら事務所の土屋輝之氏)。中古の場合も、管理組合などが協力的でないと、購入前に多くの情報を集めることは難しい場合もある。
土屋氏は「新築の場合、自分の部屋だけでなく、共用部も含めて引き渡しから1~2年後まで不具合を保証するアフターサービスを徹底活用し、入念にチェックするのが一つの手だ」と話す。中古の場合もこうしたアフターサービスによる修理や修繕履歴などを確認することで、引き渡し後の不具合の有無をある程度、確認できる。
ただ、ここでも新築と中古では保証の仕組みが異なるので要注意だ。新築は「構造耐力上主要な部分」と「雨漏りを防ぐ部分」の欠陥などは法律で10年は売り主が修理する責任を負うが、中古は不動産会社など法人から買う場合と、個人から買う場合でルールが異なり、個人から買う場合はごく短期間の保証しかない例もある。個別物件のチェックポイントに加えて、こうした制度面の違いも念頭に置いておくことが重要だ。
何かと点検項目が多いマンションだが、戸建て住宅にも独特の注意点がある。典型例は修繕費だ。マンションのように積み立てする制度は通常、存在しないのでローン返済などとは別に自ら貯蓄していく習慣が必要だ。
■中古マンション

入居後に払う管理費や修繕積立金。金額を確認しない人はまずいないが、見落としやすいのは、マンション管理組合の会計収支だ。「黒字経営なら問題ないが、運営状況が悪い場合もある」(花原浩二さん)ので、入居後すぐ値上げということも考えられる。もっとも、「値上げ自体はネガティブではない。むしろ修繕計画からみて、必要な上昇なら長い目でみて資産価値にはプラスだ」(渕ノ上弘和さん)。
積立金などは築年数や規模などがほぼ同じ条件の周辺マンションと比べておきたい。「築20年以上なのに、毎月の積立金が安い場合は修繕のために一時金を徴収しないと今後、資金が不足する可能性がある」(畠中雅子さん)。管理組合に必要な資料の提示を求め、まず過去の修繕履歴と今後の計画をチェックしたい。「マンション購入は株式投資と似ている。管理組合の収支や将来の資金計画を無視して投資はできない」(土屋輝之さん)

在宅勤務の普及で駅から遠い住宅への関心も高まったとされるが、長い目では駅に近い立地が有利とする専門家が多い。「最寄り駅から徒歩10分、できれば5分以内が理想的」(榊淳司さん)と、目安を提示する人もいた。また、「直線的な距離ではなく、(実際に移動する際の)道のりが重要だ」(池本洋一さん)という指摘も聞かれた。
中古の場合、将来もし手放すときの売却額評価では築年数が古いことは不利に働くだけに、新築以上に利便性にはこだわるべきだという考え方もある。「私も中古マンションを購入するときは駅からの距離に最もこだわった。結果、築15年になった今も購入希望者が多数いる状態を保てている」(畠中さん)と実体験に基づく助言もあった。

周辺の街の状況は大切だ。例えば、マンションから「近隣の公園や病院、学校、お店へのアクセスの利便性は必ずチェックしたい」(上田真一さん)。また、中古の場合、マンション内の雰囲気もできる限り確認したい。「近隣世帯との関係は最もトラブルになりやすいこと。可能であれば、購入を考えている部屋の両隣だけでなく、上下階まで確認したい。可能な範囲で玄関やポストだけでも見るといい」(花原さん)。マンション全体でみて、どんな年代・家族構成の世帯が比較的多いのかを事前にチェックしておくのも一つの手だ。

大きな買い物である住宅購入。「資金計画を立てず家探しをするのは非現実的だ。自己資金とローンのバランスなどを慎重に見極めたい」(久谷真理子さん)。マンションの場合、ローンの返済額や固定資産税などに加えて「管理費や積立金が長く続くコストとしてかかり、途中で引き上げになることも多い。物件選びに先だって生涯のキャッシュフロー(現金収支)を専門家にしっかり試算してもらうべきだ」(黒須秀司さん)。

1981年6月に耐震基準が新しくなる前に建築確認を終えた物件は「旧耐震基準」とされ、その後に耐震補強などに取り組んだマンションかは確認が欠かせない。建築確認は工事前なので、建築年が81年6月以降だから安心とは限らない。建築確認日が不明な場合は「建築年が83年4月以降かが目安だ」(山本さん)。「旧耐震基準で今後、耐震補強を予定している場合は費用をどう工面する計画かも確認したい」(黒須さん)