短期集中型のアイドルから長期戦の女優へ

女優という職業にたどり着く道を考えたとき、「オーディションやスカウトを経る」「劇団員として演技経験を積む」「モデルとして脚光を浴び転身する」など様々なルートがあります。そのなかでも「アイドルから女優に転身する」という道が、一番難しく厳しいものなのではないでしょうか。

なぜなら、若さとかわいさが求められるアイドルは、短期集中型で自身の魅力を表現しなければならず、短い期間で疾走することを求められるからです。

一般企業で言えば、毎年、新卒社員が事務職として入ってくるため、若手として重宝される時期が長くないのと似ているのかもしれません。

一方、女優の仕事は様々な作品と出合うなかで、その場に必要な役割を全うしていくものです。仕事を積み重ねながら実力をつけて前進していき、年齢につれて役柄も変化していきます。進み方によっては長期戦も可能です。

女優としての実力の高まりとともに開かれていく道は、一般企業にたとえると、総合職に就き様々な部署を経験しながら、やがて会社の幹部になる道に近いのかもしれません。ですので、永作さんのように年齢と共に上手に転身していく様子は、女性たちにとって1つのモデルケースであるようにも思います。

責任感と謙虚さを忘れず進み続ける努力

永作さんは『サワコの朝』の中で自身の好きな歌として、『八日目の蝉』で使われている坂本九さんの『見上げてごらん夜の星を』を挙げていました。

下を向かずに夜空を見上げてごらんというメッセージが込められた、「見上げてごらん~夜の星を~」という歌詞に思いをはせることで、「みんなちっちゃいんだよ」と、調子に乗りそうな自分に謙虚な気持ちを思い起こさせるのだそうです。

この謙虚な気持ちを思い起こすという姿勢は、どの職業や仕事においても大切です。

四六時中、謙虚さを前面に出す必要はありませんが、仕事で関わる事業やプロジェクト、自身のキャリア構築がうまく進んでいても、どこかに慢心があると、ふとしたタイミングで足元をすくわれたり、落とし穴にはまってしまったりするものです。特に前を見て進んでいる時には、足元を確認する作業を怠りがちです。

だからといって、常に下を向いている必要もありません。前を見据えて進んでいくなかで、謙虚さを忘れずに要所要所で自身が立っている場所を確認し足元を固めていれば、進む先に落とし穴があったとしても避けられます。

責任感が芽生えて以降、着実に前進し続けてきた永作さんも、成果を出しつつ謙虚さを忘れずに足元を固めながら、同時に下を向かずに前へ前へと進み続けてきた――。その結果が、50歳の実力派人気女優としての今につながっているのだと思います。

放送中の『半径5メートル』を通して、やさしいママでも小悪魔的な女性でもなく、自他ともに認めるオバハンになりきる永作さんの姿を楽しみつつ、責任感と謙虚さを忘れずに、下ではなく前を向いて進み続ける努力を重ねていきたいものです。

鈴木ともみ
 経済キャスター。国士舘大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。JazzEMPアンバサダー、日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。地上波初の株式市況中継番組を始め、国際金融都市構想に関する情報番組『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE TV)キャスターを務めるなど、テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへ出演。雑誌やニュースサイトにてコラムを連載。近著に「資産寿命を延ばす逆算力」(シャスタインターナショナル)がある。

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