ゲームは本当に悪なのか?

――そういう背景があって、新巽中学校での大会につながるわけですね。

荒木 はい。今度は主催者は大人ではなく生徒です。新巽中学校の総合的な学習の時間を活用して実施することになりました。「脱獄ごっこ」という、いわゆる「泥棒」と「警察」の二手に分かれて鬼ごっこをする「どろけい」の要素があるスマートフォンゲームで対戦してもらいました。それだけではなく、生徒自身が「ゲームは本当に悪なのか」「ゲームを学習に役立てることはできるのか」というテーマを設定して、プレゼンテーションもしてもらいました。

新巽中学校(大阪市生野区)のeスポーツ大会の様子

――わたしもオンラインで当日の大会の様子を見ましたが、「ゲームは本当に悪なのか」を問いかける生徒3人のプレゼンテーションはなかなか見事でした。依存症などゲームのリスクを論じつつも、教育効果の高さをアピールするという展開でしたね。

荒木 ありがとうございます。僕らは本当にあくまで伴走者でして、特に、山本先生が授業の中で生徒と協同いただきつつ、2年生の78人とオンラインでコミュニケーションも取りながら、約4カ月で生徒は大会をつくりあげました。生徒にとっては、ポスターをつくって広報をしたり、コンセプトづくりやチームマネジメントなど、ゲームにとどまらない、かつ授業だけでは実現できない幅広い学びがあったかと思います。

――途中で中継の回線が固まるなど、トラブルもありました。

荒木 山本先生とも現場でお話していましたが、あの時、本当に我々は何も口を出さずに生徒に任せたんです。実社会でも回線が固まることってあるじゃないですか。そこで、どう現場で臨機応変に対応するか。これもリスクマネジメントの学びです。

――そうだったんですね。しばらくして復旧して安心しました。

荒木 あのトラブルもいい経験だったと生徒たちは言っていました。見ている方々にはご迷惑をおかけしましたが(笑)。

――まさに、普通の授業だけでは身につかない力ですよね。しかし、先ほどの「ゲームは悪なのか」問題に戻りますけど、ゲーム=悪という考えは社会の中で根強い気がします。

荒木 例えば視力が低下するとか、ゲームを長時間やりすぎて中毒状態になるとか、デメリットが定量化されやすいことが一因だと思っています。そうした問題への対処方法は、今回の取り組みの中でも、プロゲーマーの方に講義していただきました。一方で、メリットは定量化しにくいんですよね。

――メリットとしては、どのようなものが挙げられますか。

荒木 生徒のプレゼンの中でも出てきましたけど、幼いころ、ゲームを通じてひらがなやカタカナを読み書きできるようになったという話がありました。つまり、ゲームが学ぶきっかけになったと。ほかにも、例えば、シューティングゲームなどは、敵の状況、自分や味方の状況など、情報量が非常に多い中で一瞬で判断して実行する情報活用力が養われるという側面があります。

これだけではありません。eスポーツは、性別や障害の有無なども決定的な壁にはなりません。多様性に関する教育にもつながります。仲間と一緒にプレーするにはコミュニケーションやコラボレーションする力が必要です。自分の強みや弱みの理解だけではなく、仲間の弱みや強みを知るきっかけになります。

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