最新ペット見守りカメラ4選 動画短縮やエサやりも

長期の巣ごもり生活でペット愛が深まる中、職場や外出先からもペットを見守っていたいと願う飼い主もいるのではないか。矢野経済研究所によると、国内のペットテック市場は約7億4000万円規模。そのうち約9割を見守りカメラが占める。
通常の屋内用見守りカメラとの最大の違いは、家の外からペットとコミュニケーションをとるための機能が充実していることだ。広範囲にカメラが首を振るパン(左右振り)・チルト(上下振り)機能で、室内にいるペットを探せる。双方向通話機能があれば、カメラに映るペットの声が聞け、こちらから声かけもできる。他にも動体検知して自動録画する機能があれば飼い主不在時のペットの動きを録画で確認できる。この機能を搭載する機種も増え、機能向上の競争が激しくなっている。
そこで、今回家電メーカー、防犯カメラメーカー、海外ベンチャー発の機種など4機種を選び、実際に使ってみた。
1週間分の動画を35秒で見られる機能付き

※定額利用の場合月額1430円(税込み)
サイズ/高さ133×幅98×奥行き98ミリ 450グラム
画質/約200万画素
パン・チルト/360度・90度
アプリ利用料/無料
パナソニックは、2018年にHDペットカメラの販売を開始。20年8月発売の現行モデル「KX-HDN215-K」は2号機に当たる。カメラの操作や再生は、専用スマホアプリ「ホームネットワークW」で行う。
2歳と5歳のメインクーン3頭と16歳のミックス1頭の猫を飼う青山明氏に使い勝手を試してもらった。
出力画質はフルHD(1920×1080)、HD(1280×720)、VGA(640×480)から選べる。フルHD画質を選択したところ、非常に鮮明で色もきれい。「毛の色合いや表情まで再現されていた」というのが青山氏の感想。アプリを操作し、カメラを見たい方向に動かすパン・チルト機能を使えば、最大で左右360度、上下90度を映し出せる。

動体検知センサーをONにするとカメラで動いたものを検知して自動的に10秒~15分間の録画をし、スマホに通知。ペットだけでなく動いたものを検知するため、一般的な見守りカメラでは、動画が大量に保存され、見直すのが大変になることが多い。KX-HDN215-Kでは「お気に入りの場所」を3カ所登録して見られる。「トイレや水飲みの場所を登録して外出中や夜中にどのくらい水飲み・排せつをしたかをさっと確認できた」と青山氏は言う。さらに行動ログ機能を使えば、特定の1カ所に絞り、20秒以上滞在した回数をカウント。動画一覧に足跡マークがつくため探しやすい。
青山氏は撮影した画像をダイジェスト版にする新機能「1週間ダイジェスト」にも気付き、「忙しい時でも1日5秒、最長35秒で振り返ることができるのは便利」と感想を語った。
気になった点は、声かけやパン・チルト操作してからひと呼吸のタイムラグがあること。パナソニックCMJ本部 商品センター スマートコミュニケーション・メディア担当 近藤譲氏によれば、この点は「技術面だけでなく、Wi-Fi環境などに起因する面もあり、これから解決していく」と言う。
初期費用なしで月々1430円(税込み)払うことで定額利用もできる。使い勝手や自宅でWi-Fi環境などとの連携がうまくいくかなどを試せるのは安心だ。

約7000円で高画質を実現

サイズ/ 高さ105×幅70×奥行き85ミリ 163グラム
画質/354万画素
パン・チルト/355度・50度
アプリ利用料/無料
三重県に本拠を構える防犯カメラメーカー新鋭が発売する見守りカメラが、SecuSTATION「SC-LC53」。屋外用セキュリティーカメラの技術を使って開発・製造している。
この機種は実勢価格が約7000円とコストパフォーマンスに優れる。画質はペット見守りカメラの中では高解像の部類に入る354万画素で、パン355度、チルト50度と十分。検知ポイントを10カ所まで登録できるのも他機種に比べて多い。実際試してみると、画像はきれいで、暗くなった場合の画像もよく見えた。


動体検知や自動追尾はかなりの精度。SNS(交流サイト)への動画投稿もしやすく、ペット見守りカメラとしては必要な基本性能はほぼカバー。双方向通話では、音声を聞きながらの通話を行えないのは残念だった。機能がシンプルな分、専用アプリ「SC-Lite」の操作は分かりやすい。ただし、設定では設定ガイドの最初にあるQRコード読み込みよりAPモード接続を選んだ方が成功しやすかった。
高級機種EZVIZ「C6T」(実勢価格1万7600円・税込み)も販売しており、こちらはより画像が鮮明で、双方向通話のタイムラグがなく、ストレスなく使えた。

AI搭載で犬の動きを識別して録画

サイズ/ 高さ225×幅150×奥行き120ミリ 950グラム
画質/約200万画素
パン・チルト/なし
アプリ利用料/無料
※オプションの有料サービスあり
ペットとより緊密なコミュニケーションをとるための専用カメラの筆頭が、犬専用カメラ「Furbo(ファーボ)」だ。16年に台湾のペットテック企業Tomofun(トモファン)が米国のクラウドファンディングで資金調達し、17年に日本上陸。おやつが飛び出す愛犬専用のカメラとして話題を呼んだ。
他のペット見守りカメラにあるようなカメラのパン・チルト機能はないが、実際に犬を飼っている竹村譲氏と愛犬ボビーに試してもらうと、「犬は上に登ることはないし不便は感じなかった。視野角も十分」。画質も悪くない。

最大の特徴は「おやつをあげる」機能。画面でおやつアイコンを上にスワイプするとおやつが飛び出す。おやつの個数は毎回異なり、飼い主が設定できない。理由は、Tomofunの布施健氏によると、「Furboに犬の興味を引き付けるというドッグトレーニング法を採用しているため」とのこと。
20年6月からサブスク(定額課金)の新サービス「Furboドッグシッター」がスタート。有料(1カ月税込み798円。年間割引あり)で、1カ月のお試し期間がある。人工知能(AI)のディープラーニング(深層学習)により犬に関連した動きや音を検知するため、録画の見直しが大変効率的。自動録画し、通知する機能や1日の様子を60秒動画にまとめるドギーダイアリーなどが付加されている。「今後は、嘔吐(おうと)など留守中の犬の安全や健康面での異常を通知するサービスを強化していく方針」(布施氏)だそうだ。


猫と一緒に遊ぶカメラ付き猫用ロボット

サイズ/高さ76×幅76×奥行き70ミリ 223グラム
画質/約200万画素
パン・チルト/なし
アプリ利用料/無料
19年11月、米国のクラウドファンディング「Kickstarter(キックスターター)」で2500人からの支援を受け、5000万円近い資金を集めたのが中国・深せんのベンチャー企業Enabot(イナボット)社のEbo(イーボ)。20年4月には日本にも上陸し、「Makuake」で先行販売された。
Eboの設定は簡単で、カメラの画質は約200万画素で鮮明だ。暗視もカラーで撮影できる。自走もでき、床に敷いた薄手のラグ程度なら難なく上る。充電が少なくなるとスタンドに戻る。
パン・チルト機能がない代わり、画面に写っていない猫を探すには、Ebo自体を操作する。リモコンロボットを動かしている感覚だ。さらに、猫が追いかけたくなるようなポイントレーザーを出すなど動きを変える指示が出せる。外出先からEboを操作し、留守番中の猫を遊ばせることができるのが最大の魅力だ。
実際ペットの猫で試したところ、猫は小型球体のEboにおびえる様子はなく、様々な動きや頭部から飛び出していた羽根に興味をそそられていた。
ペット見守りカメラの機能もあるが、飼い主と猫が一緒に遊べるロボットの側面が強い。販売代理店のFAG木伏裕一氏によれば「今後はロボットとしての性能を強化し、猫の健康管理や安全に関する通知などのサービスを増やしていく予定」だそうだ。



(ライター 大石七里、日経トレンディ 行武知子 写真 洞澤佐智子)
[日経トレンディ 2021年5月号の記事を再構成]
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