コロナ下、健康・手軽・豪華にニーズ 日経POS情報
「日経POSセレクション2020 売上No.1」決定
日本経済新聞社はスーパーなど小売業のPOS(販売時点情報管理)データを基に、加工食品や飲料など約2000ある分類ごとに2020年に最も売れた商品「日経POSセレクション売上No.1」を決定した。コロナ下で生活様式も変わり、これまで以上に健康を意識した商品が売れ、手軽さだけでなく豪華さも加わった商品の売り上げが伸びた。オンライン会議やマスク装着で新たな気付きも商品の売れ行きに影響を及ぼした。
体調・体形維持に商機
コロナ下では多くの人が改めて日々の健康管理の大切さを痛感し、食事に気を使う人が増えたとみられる。20年は体調や体形の維持に励む消費者の取り込みに成功した商品が大幅に売り上げを伸ばした。
低カロリー甘味料(粉末・固形)で1位となったのは、サラヤの「ラカントS 顆粒」だ。100%植物由来の甘味料で、砂糖と置き換えれば簡単にカロリーと糖質をカットできる。もともとは糖尿病の人向けに開発された商品だが、外出自粛期間中の「コロナ太り」対策で、20~30代の女性にまで購入層が広がった。日経POSデータによると、20年の来店客千人当たり販売金額は前年の約2倍の水準にまで伸びた。
オートミール部門で1位の日本食品製造の「日食プレミアムピュアオートミール」は、和風の味付けに合うよう原料のオーツ麦を薄く加工しているのが特徴だ。オートミールは、穀物のなかでもたんぱく質や食物繊維を多く含む。コロナ前には、多くの消費者にとってなじみのない食品だったものの、SNS(交流サイト)で栄養価が高く、ダイエットにも向くと紹介されるようになり販売が急増。幅広い年代から新規顧客を獲得し、20年の千人当たり販売金額は、前年の約2.6倍にまで拡大した。21年に入っても勢いは衰える気配はなく、1月の千人当たり販売金額は前年同月比で約2.9倍と好調を維持している。
男性もスキンケア
新たな働き方として一気に広がったのがオンライン会議だ。パソコンの画面に映る自身の顔に戸惑う経験をした人も多いだろう。男性用の化粧水やクリームなど男性用化粧品が伸びた。
「画面上で自身の顔を直視する機会や家で過ごす時間が増え、モニター越しの印象や具体的な肌悩みに気づくきっかけになった男性が多くいる」(資生堂)。同社の「ウーノ バイタルクリームパーフェクション」も好調で、スキンケア初心者でも1アイテムでエイジングケアができるオールインワンの手軽さが受けた。加えて百貨店での化粧品の対面販売が気恥ずかしい層や、そもそも百貨店に行く機会も減る中で、スーパーなどで手に入る利便性も好評の要因となったという。
すっかり定着したマスク生活とともに、舌専用のクリーナーも伸びた。マスクをしていると自分の口臭が気になるなど「コロナ禍で生活者の衛生・清潔志向が高まり口腔ケア意識も高まった」(ライオン)。トップは同社の「NONIO 舌クリーナー」で、20代女性を中心に20年は、来店客千人当たり販売金額で、対前年2桁増となった。
ライオンによると、舌みがきの習慣があっても専用商品を使っている人は1割程度にとどまり、多くが歯ブラシを使用しているという。長引くマスク生活で認知拡大とともに今年も市場の拡大が見込めそうだ。
「鬼滅の刃」関連は大盛況
大ヒットアニメ「鬼滅の刃」は、関連商品市場も大いに盛り上がった。日経POSデータで全国のスーパーの販売状況をみると、「鬼滅の刃」を商品名に使った商品は20年1月には2アイテムだったのが、映画が公開された20年10月には126アイテム、同年12月には219アイテムまで増加した。20年の年間でみると計31メーカー261アイテムにのぼった。
このうち売り上げトップはエンスカイ「鬼滅の刃 ロングステッカーガム」で「玩具入り菓子」分野で1位となった。その他にも関連商品4アイテムがカテゴリー内の売り上げ1位になっており、多くの企業が鬼滅ヒットにあやかったことがわかる。
食品は大容量へシフト
ぽん酢しょうゆで2020年1位はミツカン「味ぽん」の600ミリリットル。長い間1位だった同商品の360ミリリットルと入れ替わり首位に立った。
ぽん酢しょうゆの各商品を299ミリリットル以下、300~499ミリリットル、500ミリリットル以上の容量に分けて、それぞれ来店客千人当たり販売金額の前年同期比をみると、1度目の緊急事態宣言が発令された20年4月には、全ての容量帯で売り上げが急増した。その後は少しずつ落ち着きを見せたが、500ミリリットル以上の商品だけは秋以降も高い伸びを維持している。他の商品でも単位容量当たり価格が安い大容量商品に売れ筋がシフトしているようだ。
プレミアムアイスで1位になったのはハーゲンダッツジャパンの「ラバーズアソート バニラ・ストロベリー・クッキー&クリーム」、こちらも長い間1位を続けていたハーゲンダッツジャパン「バニラ」を抑えての1位だ。
ハーゲンダッツジャパンは「家族がそろう時間が増え、みんなで楽しめる商品が選ばれる機会が増えた」と分析する。食品の各分類で売上1位になった詰め合わせタイプの商品は19年の4商品から20年は8商品に増えた。コロナ下で家族が家で食事する機会が増え、大容量や詰め合わせタイプの商品がより売れるようになっている。
プチぜいたくで単価上昇
2020年はコロナ下の新生活様式で、商品の購入の傾向にも変化がみられた。日経POSデータで、スーパーに来店した1人当たりの購入商品の個数を見ると、2019年は9.5個前後で推移していたが、コロナで自粛ムードになった20年3月に9.9個、緊急事態宣言が発令された20年4月には10.8個と急増した。その後も高止まりして10個を上回る水準で推移している。
来店客数も20年4月以降、前年割れが続いている。コロナ下で、スーパーに行く回数を減らし、一度に多くの商品を購入している様子がうかがえる。
商品別に売れ筋をみると、冷凍カツで1位のニチレイ「極上ヒレかつ」は電子レンジで温めて食べられる手軽さがウリだが、使用しているカツは従来よりも高級品を使用している。平均価格も前年1位のマルハニチロ「チキンマヨネーズカツ」の倍近い。
緊急事態宣言で在宅勤務が増え、家に家族がいる時間が増えると、家事も仕事も同時にこなす必要がある。今まで以上に食品にも簡便さが求められるようになっていることがうかがえる。一方で、外食を控える代わりに家で豪華なものも食べたくなる。また、外でお酒を飲めない代わりに家飲みが増えたことで、消費が増えている商品もある。
ほかにもコストパフォーマンスのいい大容量の商品が売れたり、免疫力を意識して以前より健康を意識した商品が売れたりした。コロナによる消費の変化が、そのまま定着している。
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【2021年2月24日付 日本経済新聞朝刊】
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