――20年夏の生物学五輪は長崎県での予定が変更され、初のリモート開催となりました。21年化学五輪もコロナ下が想定されています。生物学五輪の開催までの経緯は。

あさしま・まこと 1944年(昭和19年)、新潟県生まれ。67年東京教育大(現・筑波大)理学部卒、72年東大院博士課程修了。07年東大副学長。16年東京理科大副学長。18年から帝京大特任教授を務める。専門は発生生物学 

浅島 1年前、本当にできるのか、かなり迷いましたよね。国・地域によって事情も異なるし、各国に聞いたら、最初は「ノー」が多くて。ただ、我々としては今の通信事情ならリモートでやれると考えたんです。

この大会をめざしてきた生徒のために開催すべきことや、困難な状況で国際交流を継続することに意味があることを訴えました。世界に優れた同世代がいることを、経験を通じて生徒たちに理解してもらいたいということもありますしね。

不正をしない誓約書を提出してもらうことや、時差による不公平が出ないよう現地時間で試験することなどを記した仕様書も用意し、理解を求めました。我々は成功の条件として、参加国・地域が前回ハンガリー大会の半数である36を超えることと考えましたが、最終的に53にまで増えて、これなら行けるぞ、と。

異なる国の生徒がリモートで共同研究

――リモート開催で、どのように国際交流したのでしょうか。

リモートで試験しただけでは国際交流になりません。それで大会後、「感染症」「ゲノム編集」「生物多様性」「進化」のテーマ別に、出身地の異なる選手が4人1組のチームをつくり、リモートで議論した研究成果をポスターにまとめるプロジェクトを実施しました。各チームの世話をするファシリテーター役を募ったところ、世界で大学の教員になっている五輪経験者ら約50人が一斉に手をあげてくれました。

コロナと地球温暖化や人種の関係など、我々が考えていた以上のことを考察している発表もありました。五輪が若い人に新しいチャンスを与えていることを再認識しましたね。

たまお・こうへい 1942年(昭和17年)、香川県生まれ。65年京大工学部卒、71年京大院博士課程修了。93年京大教授。2008年理化学研究所基幹研究所長。12年日本化学会長。16年から豊田理化学研究所長を務める。専門は有機金属化学、有機合成化学

玉尾 すごいなあ。各国との信頼関係が大きいですね。

化学五輪は3月にリモート開催を決めたばかりですが、生物学のような国際交流はやりたいですね。今のところ(仮想空間に)出場選手のアバター(分身)をつくってもらい、理化学研究所の大型放射光施設「SPring-8」(スプリング8、兵庫県佐用町)をバーチャル訪問してもらうことを計画していますが。

化学五輪は20年のトルコ大会がリモート開催でしたが、コロナ下でもきちんとこうした大会が開かれることを各国の生徒たちが実感する効果が大きいと思いますね。やめてしまうのではなく、やっぱりやるんだと。

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