キューバの自然 経済の孤立がもたらした意外な恩恵

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/3/20
ナショナルジオグラフィック日本版

絶滅の危機にあるダイオウヤシの森に滝が流れ落ちる。キューバ、アルテミサ州のソロアで撮影(PETER R. HOULIHAN, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)

カリブの島々は、地球上でも特にユニークで多様な生物の宝庫だ。しかし、経済のグローバル化が進むにつれて、故意または偶然に持ち込まれた外来の動植物に侵食されている。多くの島では、こうした外来種によって在来種が完全に排除される可能性が指摘されている。

 ところが、キューバは例外だ。半世紀以上前にフィデル・カストロが権力を握った後、貿易と観光が抑制されてきた。抑制が緩和されたのはここ10年か20年のことだ。カストロ政権下の経済的孤立はキューバの人々を苦しめたが、最新研究によると、この孤立のおかげで島が外来種から守られてきたという。

 米国とキューバの科学者から成るチームがカリブ海に浮かぶ45の島を調査した結果、キューバはほかの小さな島々より外来の植物種が少ないことが判明、2021年2月8日付の学術誌「Frontiers in Ecology and the Environment」に論文が発表された。

「キューバが本当に特別な場所であることを示す有力な証拠」と、論文の著者で、米国ニューヨーク州にあるホバート・アンド・ウィリアム・スミス・カレッジの生態学者であるメーガン・ブラウン氏は述べている。

生態系のはみ出し者

 ブラウン氏らはまず、カリブ諸島で問題となっている外来植物738種をリストにまとめた。例えば、半ツル性の植物クリプトステギア・マダガスカリエンシス(Cryptostegia madagascarienis)は繁殖力が強い。在来種を駆逐し、ときには樹木に巻き付くことで知られ、既にプエルトリコや米国領バージン諸島の海岸林に侵入している。

 こうした外来植物が45島にどのように分布しているかを調べたところ、一般に、大きな島ほど外来種が多い傾向にあることがわかった。

 ところが、キューバは例外だった。キューバに侵入している外来種の数は、面積が10分の1しかないプエルトリコと同等だった。キューバでは、地元の植物学者ラモナ・オビエド・プリエト氏も研究チームに加わって、大規模な調査が行われた。「外来種が見過ごされているだけ」という可能性は低いと、ブラウン氏は話す。

次のページ
政治と植物
ナショジオメルマガ