ニュージーランド、2050年までに外来種を根絶へ

日経ナショナル ジオグラフィック社

2016/8/13
ナショナルジオグラフィック日本版

ニュージーランド政府は、絶滅寸前に追い込まれた飛べないオウム、カカポなどの固有種を守るため、外来の捕食動物を一掃するという大胆な計画を発表した。(PHOTOGRAPH BY TUI DE ROY, MINDEN PICTURES)

ニュージーランドは、ネズミ、オコジョ、ポッサムといった外来の動物たちを2050年までに根絶するという、史上初となる大胆な計画を発表した。同国に固有の動植物を襲う厄介者を追い払うことが目的だ。

「ニュージーランドに固有の動植物は、我々の国民としてのアイデンティテーの中核をなすものです」。先日発表された声明の中で、同国のマギー・バリー環境保全相はそう述べている。「彼らは数百万年の間、哺乳類のいない世界で進化をしてきました。その結果、外部から持ち込まれた捕食者に対して極めて脆弱です。外来種は毎年およそ2500万羽にのぼる我が国自生の鳥を殺しています」

ニュージーランド政府は、2025年までに、新たに100万ヘクタールの土地で外来種の増加を抑圧、あるいは排除すること、さらに沖合の島にある自然保護区で外来種を根絶することを目指している。政府は2050年までに計画を完了したい考えで、哺乳類の駆除には主に罠や毒入りの餌を使用するということだが、その他にも世界に先駆けて、外来種根絶のための新たな手法を開発していくとしている。

「今こそ力を合わせ、長期的、全国的な努力のもとに、我が国の自然遺産の多くを危機にさらしている外来哺乳類を国内から一掃するときです」と環境保全相は言う。

米ノーザン・イリノイ大学の保全生物学者、ホリー・ジョーンズ氏は、「これは非常に大規模かつ思い切った政策」だと述べている。「もしニュージーランドが目標に向けて事態を進展させられれば、それだけでも固有種を取り巻く状況は大きく改善されるでしょう」

小さな哺乳類、大きな挑戦

今回の計画は、同国を象徴するキーウィなどの鳥たちにとって大きな恩恵となる。野生のキーウィの数は7万羽を割っており、また絶滅寸前とされる飛べないオウム、カカポ(別名フクロウオウム)の数は、2014年時点で126羽であった。

過去数世紀の間、外来の哺乳類はニュージーランドの鳥やツギホコウモリ――森の地面を“歩く”ことで知られる――を好き放題に捕食してきた。とりわけ悲惨な事例として知られるのが、1890年代、灯台守が飼っていたネコが1匹だけで、固有種のスティーブンイワサザイを、その発見から数年のうちに絶滅させてしまったというものだ。

「本来は彼らが属さない土地に我々人間が持ち込んだこうした動物たちは、自生の動植物に多大な被害をもたらします」と英ケンブリッジ大学動物学博物館の鳥類キュレーターで、島にすむ鳥を外来のネズミ類から守る方法に詳しいマイケル・ブルック氏は言う。「適切な環境を取り戻すためにできるかぎりの努力をするのが、我々の責任です」

とはいえ、国土全体から外来哺乳類を一掃するというのは容易なことではない。まずひとつには、哺乳類を絶滅に近い状態に追いやるだけでは十分ではないという問題がある。哺乳類、なかでも特にネズミは驚くべき速さで数を回復する。たとえばブルック氏はかつて同僚らとともに、南太平洋のピトケアン諸島で外来のネズミを最後の80匹まで減らしたが、すぐに繁殖し、瞬く間に10万匹以上まで増加したという。

ふたつ目の問題点は、ニュージーランド政府も認めている通り、計画を遂行するために必要な技術がまだ完全には整っていないことだ。しかし政府は研究のための資金提供に前向きであり、ブルック氏は技術進歩の見込みは十分にあると見ている。

「2016年現在、これは達成可能な目標ではありません。政府が2050年までには確立したいとしている専門的な技術が、今の時点では揃っていないからです」とブルック氏は言う。「しかしながら、技術は驚くべきスピードで進歩しており、今から20~30年後には、彼らの提案は必ずや実行できるようになっているでしょう。もしこの計画が成功すれば、それは実にすばらしいことです」

最後の問題点は、過去に類を見ないほどの規模の大きさだ。たとえば2015年には、南大西洋のサウスジョージア島で生物学者らがネズミを一掃し、歴史上最大規模の全島でのネズミ駆除を成し遂げた。とはいえサウスジョージア島の大きさはわずか3900平方キロほどであり、これはニュージーランド南島の3パーセントにも満たない。また住民の数もはるかに少ない。

「政府の発表は賞賛に値しますが、これだけの規模の計画をどのように実行するのか、私には想像がつきません」とジョーンズ氏は言う。「それでもこれを実現できる人間がいるとすれば、それは間違いなくニュージーランドの人々でしょう」

(文 Michael Greshko、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年7月28日付]