学校として「流行の教育システム」を導入することにも慎重だ。自分たちの教育は自分たちの問題意識でアップデートしていかなければ意味がないからだ。当然である。子どもたちの主体性を伸ばそうという話なのに、教員が出来合いの教育システムを無批判に受け入れてその枠組みに自分をはめ込んで安心しているようなら、その状況は矛盾以外の何物でもない。

ほしゼミ講師としてここに戻ってきたい

何かを本当にたのしんで取り組んでいるひとのありのままの熱量を生徒にぶつけてもらうのがほしゼミ土曜講座のスタイル。話に結論なんてなくていい。そうやって生徒たちのなかにたくさんの「点」を置く。点を置いてやれば、大阪星光学院の生徒たちなら勝手につなぐはず。それが島田さんの思惑だ。高度な偶発性のなかに、生徒の主体性が萌芽(ほうが)するのを期待する。以下、高校2年生に聞いた。

ほしゼミ「ドローンをpythonで動かしミッションをクリアする」(学校提供)

「地歴部の僕には、小樽商科大で榎本武揚の研究をしている先生の話がとても面白く感じられました。榎本武揚に詳しいことが何の役に立つのかはわかりませんが、好きなことを一つ突き詰めていくと、それがニッチなことであればあるほど、その分野の第一人者にはなれるんだということがわかりました。それってすごいことだと思うんですよね」(中西潤さん)

「いまのうちにあえて興味がない分野を見てみるのもいいだろうという軽い気持ちで、中3の時点で医療系のほしゼミに参加してみました。そのあとはビジネス系にもアート系にも参加しました。とりあえずいろんな分野のひとが毎週来るわけですよ。自分が知っている世界とはぜんぜん違う生活をしているひとたちがいるんだなということがわかって、視野が広がりました」(浅野航さん)

「僕はクイズ研究会に所属して、いろんなことに興味があるので、いろんな分野の先生の話を聞きました。結論を言えば、僕はいろんな分野に興味があって、特定の分野に絞るのが難しい人間だということがわかりました。それで東大に行こうと決めました。1~2年の間は専門分野を決めなくていいので。そう決めてからは、自分の人生に厚みを与えてくれる学びとしてほしゼミに参加するようになりました。僕もいつか、ほしゼミ講師としてここに戻ってきたいと思います」(井上勝翔さん)

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「職業=俺」の感覚をもて