考え方にもよりますが、長く住むことは値上がりや値下がりを超越した価値を購入した人の人生にもたらすことができ、ある意味、住宅購入で成功したことになります。

マンション供給は過剰気味

特にここ5~6年、マンションを売却して含み益を現金化する人が多くいました。そういった人は大抵、その資金でまた別のマンションを購入しているケースがほとんどです。いわば自宅の購入を投資のようにして、資産を膨らませているのです。

前述したとおり、東京の都心とその周辺エリアではここ10年ほど、そのような発想でマンションを購入し、売却することが難なくできる市場環境にありました。

しかし、マンション価格がいつまでも上がり続けることはあり得ません。いつかは下がる場面がやってくるはずです。なぜなら、需要と供給の関係だけで見れば、現状はやや供給が過剰気味だからです。

東京の人口が減り始めた

最近、東京都の人口が減り始めたというニュースがありました。都は従来、25年以降の人口減を予測していましたが、テレワークの普及で5年ほど早まったようです。

一方、鉄筋コンクリート造りの丈夫なマンションは、取り壊されることはほとんどありません。仮に取り壊しても、前よりも住戸を増やして建て替えられるケースが多くあります。つまり、マクロの目で見れば中古マンションの在庫は増える一方なのです。いつかはこの需要と供給の関係に従った価格が形成される日が来るはずです。

それがいつなのか、というのは難しい問題です。しかし、ひとつ確実に見えていることがあります。

金融商品化している都心のマンション

13年に始まった大都市圏でのマンション価格上昇には重要なきっかけがありました。それは異次元の金融緩和です。市場に多くのマネーを流し込み、金利をゼロ前後に引き下げたのです。これによってマンションを買いたい人は住宅ローンが借りやすくなりました。

東京都心の山手線内のマンションは、今や住宅というよりも金融商品的な側面が強くなっているのです。金融緩和は今も続いていますが、そのうち終わります。

異次元の金融緩和を始めたのは日本銀行の総裁を務める黒田東彦氏です。黒田氏の任期は18年から2期目に入って、23年4月8日まで続きます。日銀の総裁が黒田氏からほかの人に変わると、それまで10年続いた金融緩和は終わる可能性が高くなります。

そうなると、半ば金融商品化している都心のマンションは元の住宅に戻ります。元の住宅に戻れば、その価格を決めるのは市場。市場価格は需要と供給の関係で決まります。

「長く住む」発想で購入を

ただ、このシナリオ通りになったとしても、実際にマンションの価格が下がり始めるのは3年以上先でしょう。

このため、今からマンションを買おうとするならば「値上がり」や「値下がり」を重視するという価値観ではなく、「長く住む」発想で物件を探すべきだと思います。

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「一生の買い物」といわれる住まいの購入。誰しも失敗はしたくないでしょう。戸建てやマンションの最新情報のほか、販売業者などの事情にも精通する榊淳司氏が、後悔しない住まいの選び方をアドバイスします。

榊淳司
住宅・不動産ジャーナリスト。榊マンション市場研究所を主宰。新築マンションの広告を企画・制作する会社を創業・経営した後、2009年から住宅関係のジャーナリズム活動を開始。最新の著書は「限界のタワーマンション」(集英社新書)。新聞・雑誌、ネットメディアへ執筆する傍らテレビ・ラジオへの出演も多数。