2021/2/19

休業支援金にまつわる5つの誤解

この休業支援金について、筆者も周囲にヒアリングしたところ、様々な誤解があると感じました。正しく理解するためにも、ポイントを絞って解説します。

【誤解その1】休業支援金は会社が申請するものだ

休業支援金は、事業主が従業員の分をまとめて申請することもできますが、労働者本人が申請できます。原則として、労働者と事業主が共同して作成した「支給要件確認書」で、支給対象となる休業があったことを確認しますが、もし事業主の協力が得られない場合でも諦める必要はありません。

「事業主記入欄」に押印や休業の証明がなくとも、事業主の協力を得られない旨などを記載して、シフト表や給与明細などを添付することで申請することができます。この場合、都道府県労働局から事業主に確認や協力依頼が行われます。

【誤解その2】労基法違反だと問題になるのではないか

会社側からすれば、この休業支援金を申請することで休業手当を支給していないことを認めると、労働基準法違反になってあとで罰せられるのではないかと考え、尻込みしてしまうケースもあるようです。

しかし、厚生労働省はリーフレットにおいて、「この支給要件確認書の記載は、休業支援金の支給要件を確認するためのものであり、労働基準法第26条の休業手当の支払義務の該当性について判断するものではありません」と明示しています。事業主の費用負担もありません。

【誤解その3】雇用保険の被保険者でないと支給対象とならない

この制度については、雇用保険に加入する正社員や契約社員ばかりでなく、雇用保険に加入していないパートやアルバイトの方も対象となります。もちろん外国籍の方も対象です。

雇用保険の一般被保険者になるには、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあることが要件ですが、20時間未満で働く方は多数います。また、昼間学生は学業が本分のため雇用保険には加入できません。こうした方たちについても、救済される仕組みになっています。

【誤解その4】シフト勤務で休業の証明が難しい

休業前の就労実態を踏まえて、申請対象期間に事業主が休業させたことについて労使の認識が一致したうえで支給要件確認書を作成すれば、シフト制で働く方や日々雇用者も休業支援金の対象になります。

本来は労働条件通知書に始業・終業時刻を記載するのが原則ですが、何パターンものシフトがある場合、「シフト表による」といった具合で所定労働時間が記載されていないケースは珍しくありません。申請対象月のシフト表がある場合や、労働条件通知書に「週〇日勤務」など具体的な勤務日が記載されていて、内容に誤りがなければ対象となります。

また、休業開始月前の給与明細などにより、6カ月以上の間、原則として月4日以上の勤務がある事実が確認可能で、かつ、事業主に対して、新型コロナウイルスの影響がなければ申請対象月において同様の勤務を続けさせていた意向が確認できるケースも対象になります。

【誤解その5】時短営業のシフト減は対象にならない

一部の地域では緊急事態宣言によって夜の営業を取りやめるなど時短営業の動きが広がっています。こうした時短営業によって、勤務時間が減らされてしまうことなどもありますが、全日休業でない場合でも休業支援金の対象になります。

たとえば、もともと1日8時間のシフトが3時間に減ってしまう場合など、1日4時間未満の就労であれば、0.5日休業したものとして対象になります。ただし、4時間未満の就労であっても、所定労働時間が4時間未満の場合に、所定労働時間どおりに就労している場合は1日としてカウントします(たとえば、所定労働時間が3時間の場合で、3時間就労した場合は1日としてカウント。2時間就労し、1時間休業の場合は 0.5 日としてカウント)。また、週5日から週3日勤務になるなど、月の一部分の休業も対象となります。

オンライン申請可能、積極的な活用を

前述の野村総合研究所の調査によると、コロナによる休業支援金のことを知っている人は、パート・アルバイト女性の16.1%しかおらず、実際に申請して受け取っている人は8.5%にすぎません。「自分が申請対象になるのか分からなかった」(66.5%)と回答しており、本来届けたい人に、必要な情報が届いていないことが浮き彫りになりました。

残念なことに、20年の自殺者数は2万919人(警察庁と厚労省が21年1月22日発表の速報値)にのぼり、リーマン・ショック直後の09年以来、11年ぶりの増加に転じました。なかでも女性や若者の増加が目立ちます。

特に、非正規女性労働者に大きな打撃を与えており、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な困窮は深刻です。

休業支援金の申請を自分で行うのは難しいのでは? と尻込みする方もいるかもしれませんが、手続きはそれほど複雑なものではなく、オンライン申請も可能です。厚生労働省の説明動画も参考になるでしょう。不明点はコールセンター(0120-221-276)で対応していますので、ぜひ要件に該当する多くの方に活用していただきたいと思います。

特設サイト(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html
佐佐木由美子
人事労務コンサルタント・社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所などに勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開業、その後グレース・パートナーズ株式会社を設立し代表に就任。人事労務・社会保険面から経営を支援し、親身なコンサルティングで多くのクライアントから支持を得ている。また、出産後も女性が働き続けられる雇用環境の整備をはじめ、女性の雇用問題に積極的に取り組んでいる。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本」(ソーテック社)。新聞・雑誌などメディアで活躍。