アイスなのに「ぬくもる」を大切に

ロングセラーに欠かせないのは、「長年のファンを納得させながら、新たな魅力を発信する新フレーバーの投入」だと、安藤氏はいう。実際、1年間に10種類以上の新フレーバー(既存品のリニューアル含む)を投入することもあり、20年度は既存品を除いても7種類を売り出した。開発にあたって大切にしているのは、「商品の世界観を崩さない」というルールだ。もともと20~40代の女性が主な購買層で、丸みを帯びたパッケージを含めて、見た目のかわいらしい印象が持ち味。「女性的な雰囲気のあるブランドであり、やわらかいムード、なめらかな食感などの『らしさ』に反するフレーバーは、いくらブームになっても選ばない」という方針を貫いている。

ロッテのアイス商品で稼ぎ頭になっているのは、「飲むアイス」という位置づけの「クーリッシュ」だ。片手で握って食べるタイプの商品として03年に登場。売り上げが「雪見だいふく」を追い抜いた。自社内での首位を奪われた格好の「雪見だいふく」だが、安藤氏は気にしていない。「クールダウン効果を期待される商品とは、お客様が求める機能価値がはっきり異なっていて、かえって『雪見だいふく』の個性を再確認するきっかけになった」とポジティブに評価する。「暑さやほてりを抑えるクールダウンのメリットを主な目的に買い求めるアイスと『雪見だいふく』は立ち位置が違う。むしろ、そこに深掘りの余地がある」とみる。

新型コロナウイルスの影響で、家ごもりが広がり、アイスに求められる役割も変わってきた。「食べた後に幸せな気持ちになれたり、安らぎが得られたりするような効果が期待されるようになった」(安藤氏)。もともと甘い物にはそうした安らぎに導く働きがあるとされる。長く続くスイーツ人気にも、なごみやくつろぎを望む意識が下地にあるという。ロッテは専門の「雪見だいふくブランド課」を設けて、コロナ禍のずっと前から、消費者に寄り添う商品開発に取り組んできた。

「雪見だいふく」の場合、餅の食感や、丸っこい見た目など、和むようなたたずまいに加え、「自宅で落ち着いて食べるアイスと広く認識されている」。以前からテレビCMでも入浴しながら食べる女性を登場させ、プライベート感を印象づけてきた。コンビニエンスストアで買える2個入りがおなじみだが、コロナ禍が広がって以降は「9個入りの箱タイプの売れ行きが好調で、買い方に変化が生じつつある」という。

「ハートのいちご」はパッケージの裏側もハート形

不安がつきまとう今の消費者心理になじむ商品といえそうなのが、3月ごろまでの販売を見込んでいるという、ハート形のラクトアイス「ハートのいちご」だ。従来の丸形ではなく、見るからにやさしげなハート形を採用。餅部分はピンク色で、愛らしい見栄えに仕上げている。「食べるとき、ほっこりした幸せな気分を感じてもらえるという、情緒的な価値はこれからも大切にしていきたい」と、安藤氏は「雪見だいふく」の居場所を語る。「クールダウン系アイスの役割がリフレッシュやすっきり感だとすれば、『雪見だいふく』は心がぬくもり、穏やかな気分で癒やされるといった、別の価値を提供したい」(安藤氏)

「ふく」の文字が大きい冬期限定商品

「小さな幸せを届ける」というミッションを物語るような商品に冬季限定の「ふく企画パッケージ」がある。パッケージに印刷された商品名のうち、「ふく」の2文字だけが大きい。ハッピー感を得られる冬の「御利益商品」として楽しみにするファンが少なくない。今冬は特別に「小さな幸せが大きく見えた年でした。あなたの“大きく見えた小さな幸せ”を教えてください」と、ツイッターで小さな幸せのエピソードを募るキャンペーンも実施(既に募集は終了)。ファンとの絆を重んじる商品らしさを示した。

パッケージ表面のシールをはがすと、裏側にはマスコット的キャラクターである雪見うさぎからの手紙が書かれているところも、ファンを引き付ける理由になっている。「パッケージが変わるたびに手紙の文面を変更し、フレーバーごとにも変えている。お客様相談室には手紙の返事をもらうことも多い」(安藤氏)。パッケージを開けて食べれば、口の中はひんやりするが、何だか心がぬくもる気がするのは、包んでいる餅の食感のおかげだけではないようだ。

(下)冬限定だった「雪見だいふく」 トースト載せも話題に >>

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