40歳迎えた「雪見だいふく」 後発からオンリーワンへロッテ マーケティング部 雪見だいふくブランド課 安藤崇平氏(上)

「40周年の記念商品は準備中」と語るロッテの安藤崇平氏

餅でくるんだ和菓子タイプのアイスミルク「雪見だいふく」は名前の通り、「冬に食べる氷菓」という、新ジャンルを開拓した商品だ。実際、2個入りは長く冬季限定の扱いで、通年販売になったのは、2018年4月からと、まだ日が浅い。画期的とも呼べる新発想の商品をロッテが生み出せた理由を、マーケティング部雪見だいふくブランド課の安藤崇平氏は「アイスクリーム分野では後発だったことが結果的に幸いした」と振り返る。1981年の発売から数えて「不惑」の40歳を迎えたロングセラーの誕生の裏側には、後発メーカーの逆境を覆す戦略があった。

(下)冬限定だった「雪見だいふく」 トースト載せも話題に >>

「雪見だいふく」を発売した81年当時、アイスクリーム業界では乳業系メーカーがシェアの大半を握っていた。ロッテは「アイス市場に進出して間もない後発という立場だったのに加え、もともと菓子メーカーでもあったので、乳業系が確固たる地位を築いていたカップタイプやバータイプでは食い込みにくいと判断した」(安藤氏)。スティック状のバー氷菓という選択肢もあったが、新味に欠けるとみて、全く新しい商品の開発を目指した。

後発メーカーが市場に切り込んでいくには、「従来にはない形態が必要だと考え、調査と検討を重ねた」。その際に浮上したのは、先行メーカーとの競合を避けやすい秋冬シーズンへの商品投入だ。当時はアイス商品は「体温を下げるクールダウン効果が支持され、夏季に売れ行きが偏る傾向が強かった。秋冬は売りづらいオフシーズンのような位置づけだったが、この時期を狙って、あえて新商品を投入すれば、市場を掘り起こせると見込んだ」と、安藤氏は開発の意図を説明する。

さらに、菓子事業からスタートした同社ならではの強みを生かそうと、菓子作りの技術を使ったアイスのリサーチを開始。たまたま九州へ出張した研究員が黄身あんを包んだ焼き菓子を見付けたことが商品化のきっかけになった。ラクトアイスをマシュマロで包むという方向に発展させて、前身商品にあたる「わたぼうし」を80年に発売した。丸く形を整え、樹脂容器に2個ずつ入れるというアイデアが採用されていて、「雪見だいふく」の原型といえる。

前身商品の「わたぼうし」は外側がマシュマロだった

消費者の反応はまずまずだったが、大ヒットにまでは至らず、ロッテ開発陣はもう一段の練り直しに挑んだ。マシュマロの食感はソフトで、中身のアイスとのずれ加減も悪くなかったが、「もっと日本人に親しみのある素材である餅でくるんだら」という提案から、現在の大福餅タイプを採用。一気に和風へスイッチした。「後発のチャレンジャーとしては、それまで世の中になかった、常識を超えるような商品を打ち出す必要があった」(安藤氏)。パッケージや宣伝にも「和」の雰囲気を押し出した。

もともと秋冬商品はアイス業界の悲願だった。暑い時期には売れ行きが伸びるが、冬場は体が冷えるのを嫌って、消費者が売り場から遠ざかってしまう。夏と冬の売上比率は7対3ともいわれた。保冷ショーケースは通年でスペースを確保しなければならないのに、季節間の売れ行きに幅がありすぎる。しかも猛暑や冷夏が起きると、天候次第で売り上げが大きく左右されてしまうという課題も抱えていた。そういった季節感のアンバランスを整えるうえで、「雪見だいふく」は理想的な新商品と映った。アイスでは異色の「雪見」というネーミングや、雪景色を眺めながらこたつで食べるといったシーン設定も「消費者が持っていた『アイス=夏』という意識を覆すうえで効果があった」という。

次のページ
特許で守られた「秘中の秘」の製法
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら