その道の達人は教え方もうまい

――誰から何を学ぶかも重要になってきます。

「先生選びが一番大事ですね。学ぶ側からの観点で言うと、基本はオタクな人が先生になった方がいいと思います。仕事でも勉強、趣味でもそうですが、そのことが好きな人から学んだ方が、知識がいっぱいある人に学ぶより身につくと思います」

「僕は釣りが趣味だったんですが、最初は知識の豊富な人に教えてもらったんです。色々詳しく教えてもらったんですが、なかなか釣りそのものはうまくならない。何でだろうと悩んで、次はトッププロの人に教えてもらったら、すごくわかりやすかったし、釣りの腕も上達しました。前の先生と教え方も比較できるので、『こう教えてもらうとできるようになるんだ』とか、色々勉強になりました」

「背中で語る」は半分間違っているのではないか、と語る

「職人さんの世界などで、『師匠は言葉で教えないで、背中で語る』とかあるじゃないですか。あれは半分間違っているんじゃないかな。その道の達人は技術を自分の身につけるときに、きちんと言語化して理解して、自分のものにしているんです。だから達人は教え方もうまい。誰に学ぶかを見極める力も大切だと思いますね」

――糸井さんの目指す「学び」を表す言葉はありますか。

「うーん、何だろう。『人間理解と学び方』に近いかな。何か今、いいこと言った気がする」

「学びでは立場上、先生と生徒に分かれますけど、お互いにリスペクトして親しむという姿勢が大切です。知識を覚えるというよりも、自分の好きなことを知りたいときって、その道の達人を尊敬しますよね。だから親しくなって、より相手のことを知りたい、話を聞きたいと思う。そして相手の言葉や行動などから色々学ぼうと、自然となります。そんなイメージですかね」

「働くときもそうですけど、毎日が自分のことでいっぱいいっぱいの人とチームを組んでも、長続きしないことが多いですよね。豊かさとか教養とか、うまく言えないけど奥行きとか。学びでも仕事でも、『この人いいな』と思える人と仲良くなって、教えてもらったり協力したりするのがいいんじゃないでしょうか。内輪の飲み会とかで、『俺、下手だけどピアノ弾けるんだよ』とかいって、少しでもポロロンって弾いてくれたら、ちょっと格好いいし、いいなと思うじゃないですか。好きなこととか好奇心って大事です。興味とか好奇心の連続が、その人そのものだと思うんです」

糸井重里
1948年生まれ。法政大中退後、コピーライターとして有名なコピーを多数手がける一方、作詞や文筆、ゲーム製作など多彩に活躍。98年サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げ、2002年版から「ほぼ日手帳」を発売。17年に「ほぼ日」がジャスダック上場。18年からリアルでの講座形式で「ほぼ日の学校」開始。

(笠原昌人)

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