――祥介さんも自分で縫うんですか。

祥介「できますよ。アイロンもすべて自分でやります。おやじの血かな。パンツなんかクリース(折り目のライン)を上の方のどこまで入れるか、女の人には分からない」

「僕もシャツはすべて自分でアイロンをあてます。今日、着ているブレザーは今年購入したものなのですが、実はボタンをすべて付け替えました。祖父が持っていた金ボタンコレクションがあって、そこから選んで。付け替えるのに2時間かかりましたね」

「50年前のコートはとにかく重い」と謙介さん。撮影時のフィッティングは塁さんが担当する

男の服、着方は見よう見まねで

――謙介さんから、洋服の手入れも含めた教育、「服育」みたいなものがありましたか。

祥介「男の場合、着物の着方を教えることはない。見よう見まねで着ているうちに覚えていくもの。同じように服の着方も手入れも、親から子へ伝えるというよりは、生活の中で覚えていくものですよね。TPOもあちこち出かけるなかで、こういうシーンではこういうものを着る、ということを大人から学んでいきました」

――服装のカジュアル化が進み、ドレスコードも自由になって、オンオフの境界がなくなっています。塁さんは装いの変化をどう見ていますか。

「祖父、父のときと比べると、この20~30年はいわば超カジュアル化。僕自身もカジュアルになっていますし、それを否定はしませんが、きちんとおしゃれをできる大人が少なくなっている気がします。僕の世代、50歳くらいが、装いをもう一回勉強し直すいいタイミング。しかもコロナによってネクタイをしない、ジャケットも着ないようになっているからこそ、きちんと服装を考える必要が出てきそうです」

祥介さん(左)の大学入学で上京した謙介さん。このころVANの東京進出を計画していた=石津事務所提供

――もう一度自分のワードローブを見直すにもいい機会かもしれません。

祥介「きょうは12月にふさわしい、華やかな服装を、というリクエストがあったので、だいぶ前につくった濃いグレーのスーツに、このタータンチェックのネクタイを合わせました。久しぶりに締めてみるといいね」

「濃い色のスーツは締まってみえます。紺ブレにこのネクタイだとまんまの”アイビーおじさん”になってしまいますけど、スーツに合わせると遊びがあります。今はミックスを楽しむ時代で、スエットの上にブレザーを着てもいい。でも、スーツにネクタイという、きちんとしたスタイルをたまにやってみると、新鮮に感じるはずです。お、いいね、と人に言わせるような装いの日を持ってみると、楽しくなると思います」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

石津祥介
服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。

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