現地大学と提携し、エンジニア育成

小林さんはベトナム法人の代表となり、現地で6年あまり駐在する間に約1300人の開発者集団をつくり上げた。ハノイ工科大学など現地の4大学とも提携し、エンジニア育成にもあたった。大学側に技術経験のある教師を派遣し、常に1500人あまりの学生にITと日本語の教育を施している。同社は人気企業になり、「毎月1千人あまりが入社試験を受けに来るのが、採用するのは10人ぐらい」という。

17年に平井さんは小林さんにCEOの座を譲った。「単純に彼の方が優秀だと思ったからだ。あんな見てくれだが、誠実な人柄で私利私欲もない。チームを巻き込む求心力もある。ビジネスの経験値はなかったが、地頭がいいので、知識を吸収する能力も高い」と平井さんは語る。3割強の株を保有し、オーナー的な立場だが、経営は任せている。シンガポールで暮らして1人の取締役としてサポートしている。平井さんは「私が得意なのはゼロイチ。2つの会社を起業して上場したが、それを今後も仕掛けたい」と話す。

同社の顧客はスタートアップ企業からソフトバンクやソニーグループなど大企業まで幅広い。最大の特徴はベトナムを核にした巨大エンジニア集団。小林さんは「これほどの開発リソースを持ち、300以上のプロダクトを作ったIT企業は他にないと思う。システムのデザイン、企画・開発から保守・管理までワンストップで担える。しかもスピーディーに開発、改善を実行できる」と強調する。

新興国の教育支援も視野に

今後の明確なビジョンも持っている。「『2025年の崖』とDX化が課題となる中、25年まではひたすら日本企業のDX化対応に集中する。それ以降はSDGs(持続可能な開発目標)をにらみ、新興国の教育支援やIT関連など産業基盤づくりに奔走する。2030年以降は課題解決型から社会は脱皮し、価値創造型社会に移行すると考えているので、新たな価値を創造するビジネスに挑みたい」と目標は大きい。

特に新興国の教育支援には思いがある。「問題なのは親の意識。学校に行かせるより、芋を掘るとか、農作業をやらせた方が得だと考える親がまだ多い。まずは親の意識を変えないといけない」と熱く語る。最近、小林家には2人目の子供が誕生した。高校中退で一時は疎遠となった両親も、「孫の顔を見て喜んでいる。今は普通に会話していますね」と笑う。1人の男との出会いが、小林さんのキャリアを大きく飛躍させた。

(代慶達也)

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