ホームレスから上場企業トップ 早実中退の異色経営者小林泰平・サンアスタリスクCEO(上)

小林泰平・サンアスタリスクCEO
小林泰平・サンアスタリスクCEO

2020年7月に東証マザーズに上場したソフト開発のSun Asterisk(サンアスタリスク)の小林泰平・最高経営責任者(CEO、37)。早稲田実業高校(当時)を中退し、一時はホームレス生活も経験した異色の経営者だ。壮絶な人生に思えるが、小林さんは「常に好きなことをしてきただけ」と笑う。その軌跡を振り返った。

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DXブームで注目の企業

「早実の仲間とは今も仲がいい」。小林さんは年末になると、早実時代の同級生との忘年会に顔を出す。久しぶりに会った同級生は、「いつの間にか、学校からいなくなったと思ったら、今はIT企業のトップ。しかも上場までして、なんかウケるね」と喜ぶそうだ。「株を買うわ」といって応援してくれる昔の仲間も少なくない。 

7月31日に上場したサンアスタリスクの初値は1209円だったが、デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄として人気を呼び、株価は堅調。新型コロナウイルス感染が拡大する中でも需要は好調で、20年12月期も大幅な増収増益を見込む。小林さんは、ベトナムのエンジニア集団を核に約1500人の社員を率いており、多忙な日々を過ごしている。

長髪に日に焼けたたくましい顔。黒シャツに身を包んだその格好は、BtoB向けの上場企業のトップにはとても見えない。早実時代にバンド活動に明け暮れたが、外見はバンドマンそのままだ。

1本補助線を引くと、謎が解ける

小学校のころ、親の方針で大手の進学塾に通った。読書が好きで、国語と算数の成績はトップクラスだった。ロジカルシンキングが得意で「特に算数のテストはいつもほぼ満点。1本補助線を引くと、謎が解ける。そんなところが面白かった」という。しかし、理科や社会など暗記科目は嫌い。「興味のないことは何もしない主義だ」。国算の2科目受験が可能だった早実中学(当時)に進学した。

当時の早実は東京・新宿の早稲田大学の近くにある男子校だった。やんちゃな雰囲気のある面白い人間が集まっていた。雨が降ると、狭いグランドに向かってスライディングする生徒が必ずいた。大半が早大に進学できるため、運動部以外の生徒は趣味に走るケースが多かった。中2~中3のころからパンクやハードロックにはまり、新宿や渋谷などのライブハウスで音楽活動にのめり込んだ。

この体験は小林さんの早実の先輩にあたる音楽プロデューサーの小室哲哉さんやZOZO創業者の前沢友作さんの軌跡によく似ている。前沢さんも「高2のころから授業をサボって、スタジオを借りてバンド活動に精を出していた」という。ただ、先輩2人よりも早く「早稲田の杜(もり)」を後にした。高1のころにはバンド活動に専念、留年を繰り返して17歳の時に中退した。そのころ、早実の校舎も新宿から東京郊外の国分寺市に移った。

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父から「家を出ろ」
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