あなたは何を買った? 20年の新作AV機器をチェック「年の差30」最新AV探訪

世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、音響・映像(AV)機器の世界も大きな影響を受けた。2020年の動向は専門家の目にはどのように映ったのだろうか。平成生まれのライターが、昭和生まれのオーディオ・ビジュアル評論家と印象に残った今年の新作機器を振り返った。

五輪延期も、巣ごもり需要で8Kテレビのラインアップ増

小沼理(28歳のライター) 今年は新型コロナウイルスの影響で大変な一年でしたね。AV業界も影響が大きかったんじゃないですか?

小原由夫(56歳のオーディオ・ビジュアル評論家) 春ごろは、特に海外含め製造拠点がストップするなど、生産が思うようにいかないメーカーが多かったようです。結果的にテレビやイヤホンなど、様々な機器の発売サイクルが変動しましたからね。

小沼 メーカーの製造に大きな影響があったんですね。ただ、電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、テレビをはじめ音響機器などの黒物家電については20年7月の国内出荷額は前年同月比2.5%増。薄型テレビの出荷台数も30.7%増と伸びています。東京五輪の延期など業界的に痛手となる出来事もありましたが、注目の製品も出てきているんですよね。

小原 新型コロナの影響による「巣ごもり需要」があったかもしれません。8Kテレビもラインアップが増えました。

小沼 現時点ではシャープとソニーが液晶、LGエレクトロニクス・ジャパン(東京・中央)が有機ELでそれぞれ8Kテレビを発表していますね。

小原 特筆すべきはシャープ。液晶テレビは有機ELと比較して視野角が狭いという弱点がありましたが、シャープの「AQUOS(アクオス)8K」シリーズはこの弱点を独自の技術で補っています。価格も8Kチューナー非搭載の「BW1」ラインは27万円前後からと他よりも安い。8K普及に向けて頑張っている印象ですね。

シャープの8K対応液晶テレビ「8T-C60BW1」(実勢価格は27万円前後、税込み、以下同)。8Kチューナーは非搭載だがYouTubeなどの8K映像を楽しめるほか、8K画像処理エンジン「Medalist Z1」で2K、4Kの映像を8K画質にアップコンバートできる

小沼 その価格であれば、8Kテレビも手が届きますね。ソニーとLGはどうでしょう?

小原 ソニーの85インチ液晶8K「Z9H」も販売店によっては200万円を切る価格になってきましたが、まだ高額です。とはいえZ9Hの画調はものすごく精密ですよ。ディテール感、情報量に優れていて、まるで3Dのような迫力です。一方、LGの有機EL8K「ZX」シリーズはとにかく明るく、視覚的なインパクトがある。精密さのソニーと明るさのLGで、すみ分けがされている印象です。こちらも価格は77型で200万円前後です。しかしLGは液晶で低価格のモデルを出しており、21年1月には55型の液晶で市場想定価格30万円前後というモデルを投入する予定です。

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テレワークにも便利、安価な小型有機ELテレビが登場