赤楚衛二 マンガ原作ドラマの演技「髪形にこだわる」
マンガ原作のドラマ・映画化は増える一方。すでにファンがいるだけに、イメージを崩さないように演じるのは、俳優にとっては難しいのか、あるいはやりやすいのか。この分野で出演数が増加中の赤楚衛二に聞いた。

男性の恋人同士の日常を描いたよしながふみの『きのう何食べた?』は、2019年にテレビ東京でドラマ化され、多くの支持を得た。そして同局はこの秋、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』)を実写化した。人の心を読めるようになってしまった主人公が、イケてる同性の同期から好意を寄せられていることを知って戸惑う、ピュアな恋愛模様が描かれるコメディだ。
主演するのは赤楚衛二。この作品が連ドラ「単独」初主演となる。
「僕、マンガは普段からすごく読むんですよ。ただ今回はBL(ボーイズラブ)ものと聞いて、取っ付きにくいかなと。お話をいただいてからpixivコミックで読んだんですが、4ページの短いテンポ感のなかで、1コマの衝撃がすごかった。想像の斜め上をいく展開が本当に面白くて。人を好きになることとか、人との向き合い方だとかが響く作品で、心が温かくなりましたね。

僕が演じる安達は、女性と付き合ったことがない30歳のサラリーマン。コンプレックスがある感じは、共感できます。恋愛の面では、マンガでは友達の延長線上に……というのが丁寧に描かれてるんですよ。でも僕のなかでは、異性とでもそれはない。そこをどう埋めようかとずっと考えてて。
現場はすごく楽しいです。町田啓太君が相手の黒沢役なんですが、カットがかかってもずっと僕にウインクしてくるっていう(笑)。照れくさいけどうれしいし、でもちょっとコワイし、みたいな(笑)。いろんな感情が入り混じりながら安達を演じてます」
マンガ独特のセリフに困惑
赤楚はこれまでにも、馬場ふみかとW主演した連ドラ『ねぇ先生、知らないの?』(2019年)や、4人主演の映画『思い、思われ、ふり、ふられ』、連ドラ&映画展開の『映像研には手を出すな!』などのマンガ原作ものに出演してきている。
「マンガを読んでの解釈って人それぞれなので、全員を満足させることは難しいですよね。それなら、せめてルックスだけは寄せたい。特にそれが実現できるのは『髪型だろ』っていうことで、いつも髪型にはこだわってます。
マンガ原作でやりやすいのは、台本でちょっと分からない部分があっても、マンガにヒントがあって答え合わせができるところ。難しいのは、『俺のこと好きになってよ』みたいな、普段言わないようなセリフが多いと『…言えないな』みたいに壁にぶち当たります。
『ふり、ふら』は、将来の夢とか悩みとか、僕が学生時代に感じていたことと重なっていたので、共感できましたね。『ねぇ先生』は、めちゃくちゃ難しかった。カリスマイケメン美容師の設定で、『なぜその考えに至る?』という場面も多くて、自分に自信がなくなったら終わりだから、『オレはイケてる』って思い込むようにしてました(笑)。『映像研』でのロボットへの憧れが強い小林という役は、原作でのコマが少なくて、『小林ってこれかな?』っていう(笑)。ロボ愛を表現するために『機動戦士ガンダム』を見て研究しました」
「大きな本棚に好きなマンガを全部並べるのが夢」だが、現状は難しく、今はLINEマンガで楽しんでいるという。
「最近は藤本タツキさんの『チェンソーマン』の展開がエグくて衝撃でした。少し前だと、『梨泰院クラス』の原作を日本語版にした『六本木クラス』を読んでて、急にドラマがはやって驚きましたね。
実写化で素晴らしいと思ったのは『るろうに剣心』です。実際に人斬りとなると、ああいう重いトーンになるだろうし、細部にまでこだわったんだろうなと伝わってくる作品です。
きっとマンガでしかできないことと、実写ならではの楽しさがある。作品の芯は一緒だけど、『脳内で再生する』マンガと、空気感やテンポ感を『感じられる』実写という、それぞれの楽しみがあって、僕はその両方が大好きです」

(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2020年11月号の記事を再構成]
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