一人ひとりの行動から変える

「一人ひとりのできることをやろう」。これが読者へのメッセージです。投票する、当選した政治家とコミュニケーションを取る、公の場で発信する、集会を開くなどして、政府に働きかけるのです。著者は次の7項目に焦点を絞ることで、地球環境との共存がやりやすくなると提案しています。

(1)公害の削減――企業は公害対策に積極的に費用を投じようとしない。一方で、多くの国ではコスト削減を目的に公害の規制緩和が進んでいる
(2)温室効果ガスの削減――この問題は地球全体に長期的な影響をもたらす上、法規制や税制などで対処できない
(3)核エネルギーの促進――温室効果ガスを排出せず、拡張性があり、安全で信頼性のあるエネルギー源は、今のところ、これしかない
(4)生息地を含めた種の保存――種の絶滅を防ぎ、生物多様性を維持するために、土地の保護や狩猟の制限などが不可欠
(5)遺伝子組み換え作物を広める――安全性が研究により確認されている。使うことで、収量を増やし農薬使用を減らし、栄養が向上する
(6)基礎研究への資金補助――民間企業では短期間で製品化が見込めない領域とアイデアに投資が回らない
(7)市場、競争、職の創出を促す――社会主義的な考え方に復活の兆しがある。資本主義の価値をしっかり認め、社会の分断を小さくする必要がある

いかがですか。私たちの地球も、私たちの暮らしも、今、まさに転換点に立っているようです。希望を実現するための意思をどう実践できるか、が問われています。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・金東洋

私が小学校のころ、「君たちが大人になったら石油は枯渇して、天然資源も人間が取り尽くてしまっているかもしれない」と授業で教わったものです。石油はあと30年ちょっとでなくなるとも言われていました。ところがテクノロジーの進歩によって、資源の確認埋蔵量が増えると同時に、資源消費量も減少へと向かいました。私が小学校のときに習った「常識」は、古い工業化時代の知識でした。

「資本主義とテクノロジーの進歩によって、私たちは地球への負担を小さくしながら、豊かに暮らせるようになっている」という本書の骨子には賛同できないという方もおられるでしょう。著者も「頭をやわらかくして」読んでほしいと言っています。「社会が豊かになれば、自然を壊す」という昔ながらの論のほうが、説得力があるように思えてしまいます。18世紀から300年近くもこれが「真実」だったので、にわかに信じられなくても仕方ありません。

デジタル化は、経済成長と資源消費とを切り離しました。そして昔よりもずっと少ない資源で、もっと豊かな暮らしが実現しています。地球環境を保護するために、さらに経済成長とテクノロジーの進歩を目指す――なんだかこれまでの「一般常識」とは矛盾するようなお話ですが、これが現在の最新状況なのです。あなたの知識をバージョンアップする「第二啓蒙時代」を一緒に体験しましょう。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

MORE from LESS(モア・フロム・レス) 資本主義は脱物質化する

著者 : アンドリュー・マカフィー
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 2,640 円(税込み)