3Dプリンターの威力

「進歩が、より物質を少なく使う方向に進む」という潮流について、資源消費型の「製造業」「エネルギー」「輸送手段」「農業」4分野を取り上げて詳しく分析していきます。製造業でいえば3Dプリンターの普及が一例。今後、費用が格安になれば、あらゆる部品の製造に応用されるでしょう。すると大量の金型を必要としなくなるので、使われる物質の量は減ります。農業ならアグリテックの進化です。ドローンや人工知能(AI)を活用することで、土地、水、肥料といったインプットを減らしながら収量を上げることが可能になります。輸送業界にも、脱物質化の波が来るはずです。次のくだりがその解説です。

現在の輸送システムは一言でいうと非効率である。大部分の車両は使われていない時間が圧倒的に多い。使われるとしてもフルに活用されているわけではない。現代の各種テクノロジーを駆使すれば運転手、客、荷、車両の位置がすべて把握できるので、稼働状況と効率性を大幅に引き上げることができる。
 その結果として、輸送手段を所有するのではなく借りる選択肢を選ぶケースも出てくるだろう。車を所有しても、一般的に90%あまりの時間は使っていない。それより移動が必要な時に輸送手段を調達しようという人が増えていくだろう。すでにウーバーやリフトなど配車サービスの企業が登場している。こうしたサービスは世界中に急速に広まり、輸送手段もバイク、自転車、電動スクーターなど多彩だ。さらに長距離および短距離のトラック輸送などの配車サービスにも手を広げている。このような輸送手段のシフトが続けば、人とモノの移動で消費されるスチール、アルミニウム、プラスチック、ガソリンなどさまざまな資源の量は減るだろう。
(第14章 この先にある未来へ 299~300ページ)

四騎士が地球を救う

著者は、資源の総消費量を減らして地球への負荷を軽くしながら反映を続けている現代を「第二啓蒙時代」と名付けました。産業革命以降の工業化時代は、17世紀後半から18世紀にかけて広がった啓蒙主義の価値観によって実現しました。今起きている大きな変化は、その時代に匹敵するインパクトがあるというのです。テクノロジーの進歩と資本主義が結びついて、より少量からより多くを得られるようになっただけではありません。「第二啓蒙時代が目指すところは、その先である。資源の総消費量を減らすだけでなく、公害を減らし、人をもっと大事にすること」だと指摘しています。

脱物質化が進み始めたとはいえ、世界が直面する問題を簡単に解決できるわけではありません。それでも著者はあえて「明るく、軽やかな未来」を描きます。「世界には、いまなお貧しく悲惨な境遇の人々が何十億人もいるが、いつまでもその状態は続かないだろう。彼らの大部分は、数年後、あるいは数十年後にはもっと豊かになるだろう」と指摘します。もちろん、資本主義には多くの欠陥もありますから、課題を解説するには、何らかのアクションや対策が求められます。

依然として私たちは困難な課題をつきつけられている。そのひとつひとつに関心を向け、解決に向けて努力が必要だ。それを怠れば、21世紀のうちに地球温暖化は取り返しのつかないところまで進んでしまうかもしれない。経済活動が公害と種の絶滅を引き起こさないように、対策を立てて歯止めをかけなくてはならない。アメリカにおける絶望死の増加、世界全体で起きている分断、社会関係資本の減少を食い止めるために、私たちは行動を起こさなくてはならない。どうしたら防ぐことができるのか。せめて被害を最小限に留めることができるのか。この困難な課題を私たちはつきつけられている。
(第15章 賢明な介入 307~308ページ)

課題解決に導く4つの要素を本書は「希望の四騎士」と表現しています。「テクノロジーの進歩」「資本主義」「反応する政府」そして「市民の自覚」です。テクノロジーが、脱物質化を促します。資本主義は、適切に機能すれば効率化・省資源化を推進するシステムです。反応する政府とは、問題を克服するために速やかに動く政府のこと。そして、すべての動きをサポートしていくのが「市民の力」なのです。

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