4段オートマで一気に加速 オランダ発の電動自転車電動パーソナルモビリティーの選び方 第2回

ロック解除はボタンを押すだけ

登録したスマートフォンを持っていれば、ロック解除はハンドル左側にあるボタンを押すだけ。スマートフォンがないときのために、暗証番号による解錠方法も用意されている
フレーム後端にある銀色のボタンを「キック」すると、後輪がロックされると同時に警報装置が起動する

実際に乗ってみて、アプリの恩恵を最も感じたのが、自転車の施錠・解錠だった。あらかじめ登録したスマートフォンを持っていれば、ハンドルのボタンを押すだけで解錠できる。アプリを使って解錠することも可能だ。

一方、カギをかけるときは、後輪の中央部分にあるボタンを“キックする”だけ。これで後輪がロックされる。かがみ込んでの施錠や、チェーンでの固定は必要ない。

「自転車ごと持ち上げて持って行かれてしまうのでは」と心配になるが、VanMoof S3/X3にはそれを防ぐ仕組みが付いている。ロック状態で自転車を動かすと、内蔵の加速度センサーがそれを検知し、大きな警告音が鳴るのだ。動かしている間ずっと音が鳴り続けるので、多くの場合、この段階でいたずらや盗難を諦めるだろう。それでも盗まれてしまった場合、自転車本体に内蔵された通信装置を利用して位置を追跡できる。

「Peace of Mind」という盗難補償プランもある。自転車が盗まれたら、VanMoofの「バイクハンター」が場所を特定し、14営業日以内に回収してくれるというものだ。期間内に回収できなかったら、新しい自転車と交換してくれるというから、いかにVanMoofが自転車のセキュリティーに自信を持っているかが分かる。実際にこのプランは盗難の多いヨーロッパなどでも運用されており、26人の専属バイクハンターが、これまでに750台の自転車を回収したとのこと。2週間以内に手元に戻る確率は75%という実績を誇る。盗難補償は、3年間で3万4000円と決して安くはないが、25万円の自転車でありながら盗難の心配から解放されることを思えば、画期的なサービスといえる。

何も考えなくても自動アシストしてくれる

街乗りの速度域は快適そのもの。前後とも油圧ディスクブレーキを採用するため制動力も不安はない

原宿の直営店から、試乗をスタートした。はじめはフレームの小さい「X3」を選択。フレームの高さが低いので、ラクにまたがることができる。走り出してすぐに感じるのは、強力かつ自然なモーターのアシストだ。軽い踏み込みでスムーズに発進でき、上り坂にさしかかっても一向にペダルを踏む負担が増えない。まるで平地を走っているかのようにぐいぐいと坂を上っていける。ママチャリタイプの電動アシスト自転車とはまったく違う力強い走りだ。

この走りにひと役買っているのが、前輪に内蔵する最大350ワットのモーターだ。350ワットというとちょっと力強い電動キックスケーターと同等レベルで、モーターの力だけで坂道を上れるほどの出力がある。もちろん日本では道路交通法の施行規則により「時速10キロメートル未満のとき、アシスト力は踏力の2倍まで」「時速24キロメートル以上ではアシストはゼロ」などのルールが定められており、VanMoof S3/X3もこのルールに従っている。可能な範囲の中できっちりと、アシスト力を出せることと、その力をコンピューターで細かく制御していることが、爽快な走りにつながっているのではないかと感じた。

石村氏によると、欧州モデルはペダルの回転速度を検知する「RPMセンサー」によってアシスト量を調節するのに対し、日本モデルはペダルの踏力を検知する「トルクセンサー」を採用しているという。これにより「日本モデルはこぎ出しがラクで、よりストップ・アンド・ゴーに強くなっている」(石村氏)。

電動で自動変速する「E-シフター」の存在も大きい。発進時、上り坂など状況に応じて常に最適なギアを選んでくれるから、ライダーはいちいち意識する必要がない。ただペダルをこぐだけで、快適に走ることができる。

「S3」にサドルを最も下げた状態で乗っているところ。身長171センチメートルの筆者は足がやっとつく程度だ

この「何も考えずラクに走れる」というのがVanMoof S3/X3の長所。eバイクといってもスポーツ性能を追求するのではなく、そこそこの速度で快適に街を移動するのに向いている。というのも時速24キロメートルを超えるとアシストはゼロになり、100%自分の力でこがなくてはならない。ところがVanMoof S3/X3の重量はどちらも約21キログラムと、スポーツタイプの自転車と比べると重くタイヤも太めなので、スピードを維持するのが大変なのだ。あくまでアシストが効く時速24キロメートルまでの範囲を使って走る楽しいシティバイク、というのがVanMoof S3/X3の性格だと思う。クルマに例えると、カリカリのマニュアル車で走りの鋭さを追求するのではなく、大排気量のアメ車でゆったり街を流すイメージだ。

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