ラベルレスだからこそ優れたデザインが求められる
メーカー各社の売れ行きからも、ラベルレス商品に対するニーズが高まっていることが分かる。ユーザーにとってラベルレス商品を購入する魅力の一つは、ボトルをごみとして捨てる際にラベルを剥がす手間が省けることだ。プラスチックごみの減量にもつながり、SDGs(持続可能な開発目標)にも合致する。
ただ、ラベルを剥がしたペットボトルの見た目は、どこか味気ないとも言える。実際、コカ・コーラシステムが実施した調査では「ラベルを剥がしたペットボトル飲料はおいしくなさそうに見える」「中身が分からず、移し替えているようで貧乏臭く感じる」といった意見もあったそうだ。また、ECで購入した商品は家で消費すると思いがちだが、外に持ち出す人も一定数いることも分かったという。
そこで、い・ろ・は・す天然水 ラベルレスは、デザイン性の高いオリジナルのペットボトルを開発した。水のおいしさが感覚的に伝わるように、ボトルの形状はひねりを利かせた多面体。リブと呼ばれるペットボトル特有の縦や横に入る、強度を保つためのくぼみは排除した。同社は以前からペットボトルのデザインに関して研究を重ねており、ひねりを利かせた6面体のボトルなどで特許を取得している。
「今回のボトルは横からの強度が弱く、自販機での販売はできないが、飲み終わった後は簡単に潰すことができる。い・ろ・は・すブランドの潰しやすさは継承している」(富重グループマネジャー)
アサヒ飲料は、配達時の段ボールのデザインで差異化を図っている。インテリアの邪魔にならないように、クマの親子のイラスト入りのかわいらしいデザインを採用。20年6月からは、小さな子供のいる家庭に照準を合わせ、新型コロナ禍によって増えている「おうち時間」を楽しんでもらおうと、段ボール箱の一部を切り取ると「輪投げ」や「こま」として遊べる絵柄入りにした。
サントリー伊右衛門のデザインは、「人はペットボトルの飲み物を持っているだけで、ちょっと安心するものだ」という考えから、森羅万象に神を感じる「八百万(やおよろず)の神」のような「お守り」に見立ててデザインを検討。ボトルの表面に招き猫をはじめ、縁起のいいモチーフをちりばめた。ラベルを剥がしたらちょっと笑顔になれたり、前向きな気持ちになれたりする仕掛けにもなっている。
(ライター 西山薫)
[日経クロストレンド 2020年11月2日の記事を再構成]