三谷幸喜が脚本・演出、香取慎吾が主演のシチュエーションコメディ(シットコム)『誰かが、見ている』(Amazonプライム・ビデオ)。香取ふんする、予想もしない失敗を繰り返すフリーターが巻き起こすドタバタ劇だ。三谷にとっては本作が初のネット配信ドラマ。自身の思い入れが特に深いシットコムを制作するに至った経緯や意図を聞いた。

「僕の中で、香取さんと何かやりたいというのは常にあるのですが、今回Amazonさんから香取さんでドラマをとお話をいただいたときに最初に浮かんだのは、僕の作品では振り回される役が多い香取さんを今度は思いきりトラブルメーカーにしてみたいということ。その発想が1つの始まりです。
そこから主人公のキャラを考えていきました。例えば、朝起きて歯を磨いて朝食を食べて……という当たり前の動作自体が、おかしくて仕方がない、大げさに言えば、生きているだけで笑える香取さんを見てみたかった。日常の何気ない風景でも、僕が書いて香取さんが演じれば、絶対に面白い『1人芝居』になると思いました。
それと僕はセリフを書くのが仕事なので、どうしても言葉中心の笑いになりがち。だから今回は、あえてセリフのない部分でどれだけ笑いが取れるかに挑戦してみたかった。全くセリフなしは無理ですが、第1話や第4話、最終話もそうかな。かなりセリフのない長いシーンに、あえてチャレンジしてみました。配信で世界に向けてということを考えると、正しい選択だったように思います」
「その結果、香取さんのコメディアンとしての引き出しをたくさん開けることができたと思います。具体的に言うと1話では、パソコンのキーがはずれて戸棚の下に入ってしまった。それをどうやって取り出すかというくだりだけでワンシーンやりました。あと、ソファの隙間に手が挟まって取れなくなる。これも延々とやった。まさに香取慎吾1人芝居。この面白さは彼にしか出来ない。
ちなみにソファのくだりはもともと台本にはなかったんですが、もう1つ笑いが欲しいと現場で思って、リハを中断して彼と一緒に考えました。こういう動きのギャグって台本に書きにくいんです。まさに現場で生まれた笑い。香取さんとでなければ出来なかったことですね」