子育ても人材育成も マネジメントでなくコーチングでアフターコロナをどう働く(下) モンキーブレッド代表 翠川裕美さん

そのように、自分の見る目に自信がもてないときに私が考えるのは「みんなと違うのは高率でチャンスがある」ということです。ここで言う「みんなと違う」の種類は、主に3つあります。

・完成度(技術とやりきる集中力)

・視点(瞬発的な独自性)

・世界観(継続的な独自性)

この3つが他の子どもと比べて圧倒しているという必要はなく、相対的に見て「ちょっとだけ得意そうだ」という程度で十分なのです。そして、それに対してきちんとアクションしてあげることだと思います。

そこから、「得意だと思う」→「成功しやすくなる」→「成功する」→「次回もきっと成功するというイメージがもてる」→「成功を繰り返す」→「自己肯定感が高まる」という良いサイクルに入っていくことができます。

子どもたちの何気ない才能は本当にすごいので、親は力を抜いて、気付いたときに即行動に移せるようにしておけばいいと思うのです。

即行動、というのはとにかく褒めるだけでなく、才能を感じたその足で次の展開に進むことを指しています。例えば、「ボールを投げるの上手かも」と気がついたときに、気がついた流れでその週末、体操教室に体験しに行くというようなことです。大切なわが子に一流の体験をさせたいあまり、家から遠い(通いづらい)著名な人が運営するスクールを探している間に、子どものやってみたい熱が下がる、というのは本当にもったいないと思うのです。まずは一歩、できるだけスピード感を持ってアクションすることが、なかなか難しいのですが重要だと痛感しています。

多様性への許容力を育てること

少し前に、ルッキズム(Lookism)の問題が話題になったことがありました。ルッキズムとは、身体的に魅力的でないと考えられる人に対する差別的取り扱いのことを指しています。

私は美しいものが大好きですが、フォルムが美しい大きな樹を見て涙を流すことはあっても、フォルムが良くない樹を魅力的でないと思うことはありません。差別的な取り扱いをする気もさらさらありません。「美しい」という才能が、誰かを喜ばせていてすばらしいと思うだけです。

子どもの才能に気づいたときは素早くリアクションしたい(写真は運動会でお遊戯をする翠川さんの長女)

私の長女は、私が長男を褒めると「でも、もう少しお兄さんになったときは、もっと大変だよ」と急に言いだしたりします。私には、長女のことを「できていない」と言っているつもりはないのです。そんなとき私は、彼女の複雑な心の移ろいをただ観察しています。

しかし、長女が「私は頭が悪いからわからない」と言ったりしたときは、必ず突っ込むようにしています。「頭が悪いって誰かが言ったの」「自分で思ったの」「お母さんはそんなこと一度も思ったことないよ」「わからないなら教えてって言えばいい」「考えるから時間ちょうだいって言えばいい」と畳み掛けます。

「褒める」のは「褒めた人以外を落とす」ことではないのと同じく、「自分を落とす」のは「自分以外を上げて逃げ切る」ことではありません。自己肯定感の下げ癖を付けるべきではないと、私は思っています。

上下や優劣をつけることのすべてが悪ではありません。学校の成績は頑張った生徒が上位になり、何もしない生徒が下位になるべきですし、会社の人事評価システムでは上司が優劣を付けて評価をするわけです。それがやりがいを見いだせる活力になることもあるのです。

最近、長女とよく話すのは、「姉は弟に言うことをきかせる係ではない」という話です。長女は長女の、長男は長男の、次男は次男の、意思を尊重すべきで、誘ったりお願いしたりするのはいいが、思い通りにならないと怒るのをやめなさい、と。子どもたちが多様性をうまく許容ができそうにないときには、「あなたは今、上下を決める係ではない」と伝えるようにしています。

自分と違う人がいることに違和感をもって除外しようとするのではなく、その違いにワクワクできる人になってほしいと思っています。そのほうがずっと生きやすいですし、自分の人生も楽しくなるからです。

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