ゲームデバイスのゼンハイザー 新ブランドのEPOSに

7月に立ち上がったゲーミングデバイスの新ブランド「EPOS」
7月に立ち上がったゲーミングデバイスの新ブランド「EPOS」
日経クロストレンド

eスポーツやゲーム実況、動画配信などをきっかけに、PCや家庭用ゲーム機周辺で利用するオーディオ機器の需要が高まっている。

ヘッドホンとマイクが一体となったヘッドセットもその1つ。特にeスポーツにおいて「音」はゲームの状況を把握したり、チームメートと連携したりするのに重要な役割を果たす。クリアで音像定位のはっきりしたヘッドホンはゲームへの没入感と集中力を高め、明瞭でノイズのない音声を伝えるマイクは仲間との快適なコミュニケーションに不可欠だ。よりよい結果を求めるコアなゲーマーにとって、良質なヘッドセットは必須のアイテムなのだ。

2000円程度から買えるゲーミング用のヘッドセットも多い中、需要が伸びているのが数万円もするハイエンド製品だ。これにはeスポーツ選手やストリーマー(動画配信者)たちの活躍も大きく影響している。著名プレーヤーが選ぶこだわりの製品がファンに注目され、市場をけん引するからだ。

こうしたハイエンド市場で高い評価を得てきたブランドの1つに、「ゼンハイザー」がある。コンシューマー向けのヘッドホンやマイクに加え、録音スタジオやライブ会場、映画制作などで用いられるようなプロ用機器も数多く手掛けている。

そのゼンハイザーからゲーミング事業を引き継いだのが、7月に立ち上がった新会社EPOSだ。これまでゼンハイザーコミュニケーションズとして展開してきたゲーミングデバイスなどの事業が独立。新ブランドとしてスタートを切った。

EPOS設立前からある製品は今後、「EPOS | SENNHEISER」というダブルブランドで展開する。写真はフラッグシップモデルの「GSP 600」2万8800円(税込み)

決断の背景に伸びるゲーミング市場

今回の決断の裏にあるのは、ゲーミング市場の世界的な拡大だ。EPOSでマーケティング責任者を務めるマーヤ・サンド・グリムニッツ氏は「近年、市場が大きく変化している中、成果を出すには製造から販売まで一貫して取り組むことが重要だ。特にゲーミング事業のR&D(研究開発)には今こそ注力すべきだと判断した」と言う。つまり、活気づくゲーミング市場に向けて付加価値の高い製品を開発、提供するために、事業のリソースを集中させ、ブランドとして独立させる決断をしたというわけだ。

EPOSのマーケティング責任者を務めるマーヤ・サンド・グリムニッツ氏
EPOSのプロダクトマネジメント&マーケティング部門のシニアディレクター、アンドレアス・ジェッセン氏

ここで気になるのは、ゼンハイザーコミュニケーションズがEPOSへと生まれ変わるに当たって製品の開発体制などにどんな影響があるかという点だ。

同社でプロダクトマネジメント&マーケティング部門のシニアディレクターを務めるアンドレアス・ジェッセン氏は、「開発モデルや品質プロセスに直接的な影響はない」と言い切る。

実はゼンハイザーコミュニケーションズは、もともとドイツのオーディオメーカーのゼンハイザーエレクトロニクスと、デンマークに本部を置く補聴器の老舗メーカー、ウィリアム・デマント・ホールディング(以下、デマント)が50%ずつ出資した合弁会社だった。用途は違えど共に音響機器メーカーとして培ってきた技術を注ぎ込んだのが、同社のゲーミングデバイスだったのだ。

特にゲーミングヘッドセットには、デマントが補聴器で培ってきた技術が生かされている。周囲の音をマイクで拾い、それを増幅して耳に届ける補聴器の技術は、構造上、ヘッドセットに用いられるものとよく似ている。ゼンハイザーブランドのゲーミングヘッドセットの開発は同社が主導してきたのだ。

ゼンハイザーブランドのゲーミングヘッドセットを開発、販売していたゼンハイザーコミュニケーションズ

この合弁事業が20年1月で終了。それを機に、ゼンハイザーコミュニケーションズのゲーミングデバイス事業は、ゼンハイザーブランドから独立し、デマント傘下でEPOSブランドとしての再始動に踏み切ったわけだ。

それ故、開発体制はほとんどそのまま。本社はデンマーク・コペンハーゲンにあったゼンハイザーコミュニケーションズの拠点を引き継いだ。また、EPOS設立前からある製品については、「EPOS | SENNHEISER」という共同ブランドで取り扱う。

現在はコペンハーゲンの本社がユーザー調査やトレンド分析、エンジニアリング、プロジェクト管理、マーケティング、営業などを担い、製品の製造は中国で行っている。既存のリソースを引き継ぎながらも独立したブランドを立ち上げることで、小回りが利く開発体制を築き、市場のニーズにいち早く対応する製品作りができるという。

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