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『次は?』はラストに全員で歌った新曲。最後は「♪さあ、描いて」と、オープニング曲で歌ったフレーズをリフレインして、“生けるものすべての名誉ある結末をみんなで描こう”というメッセージを伝えます。お客さまに呼びかけるという歌唱スタイルもよかったので、初日に歌ったとき、僕はすごく感動していました。やっぱり、僕らは想像したいんですよね。実際には目の前に何もないけど、いろんな世界やいろんな未来を想像して、自分たちの人生を豊かにしたいという仕事だから。家の中で独りでも想像はできるけど、大勢の人と同じ時と空間を共有して、みんなで一緒に考えるって、なんてすてきなことだろう。英語で「just imagine」という歌詞が、日本語だと「さあ、描いて」。みんなで描ける、想像できる時間がやっと劇場に戻ってきたと思うと、歌いながら胸がいっぱいになりました。

東宝ミュージカルの祭典でMCの大役

『帝劇ミュージカル・コンサート』は「東宝ミュージカルの歴史を辿(だど)り、未来に繋(つな)げるプレミアムな祭典」と銘打たれたコンサートです。ProgramA(8月14~17日)・B(8月19~22日)・C(8月23~25日)と3つの期間に分かれて、それぞれ異なるたくさんのキャストが出演します。僕はProgramAとCのMCを務め、曲も歌います。曲目はProgramによって違っていて、固定の曲は全部の半分くらいかな。同じ曲だけど歌手が変わる日もあります。

『THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE』(帝国劇場/ProgramA:8月14~17日/ProgramB:8月19~22日/ProgramC:8月23~25日) 8月14日の初日舞台。MC:井上芳雄、キャスト:朝夏まなと、生田絵梨花、一路真輝、今井清隆、和音美桜、加藤和樹、城田優、瀬奈じゅん、田代万里生、新妻聖子、花總まり、古川雄大、森公美子 写真提供/東宝演劇部

初日の曲目は、オープニングが「レビュー THE IMPERIAL」。最初の国産ミュージカルといわれる1951年の帝劇ミュージカルス第1回公演『モルガンお雪』からのナンバーなどをレビュー仕立てで歌いました。そして63年の『マイ・フェア・レディ』から始まる日本のブロードウェイ・ミュージカル黎明(れいめい)期から87年の『レ・ミゼラブル』に至るまでの東宝が上演してきた名作ミュージカル、『ミス・サイゴン』など1990年代にウエストエンドを中心に花開いたグランド・ミュージカル、2000年の『エリザベート』から始まるウィーン・ミュージカルと、『レディ・ベス』など帝劇発オリジナル・ミュージカルのナンバーを全部で30曲以上、キャストたちが次々と歌い上げました。曲の合間のトークコーナーでは、皆さんが帝劇の思い出を語ってくれました。まさに、東宝ミュージカルの俳優たちのお祭りです。

もともとはオリンピックの時期に合わせて、大勢の人たちが東京に来るなかで、帝劇が培ってきたものを、外国の方に向けても発信したいという思いで企画されたものでした。ところが結果は全然違って、東宝ミュージカルに縁のある俳優たちが集まり、ミュージカルの素晴らしさと、これからも歩みを進めていくという希望を歌い上げるコンサートになりました。これが劇場再開後の初舞台というキャストの方々もたくさんいますし、裏のスタッフも久しぶりに劇場に戻って来られた方々ばかりです。本当に感慨深く、意義のある公演になりました。

僕は『ナイツ・テイル』コンサートがあったので、稽古は途中からの参加でしたが、MCとあって責任は重大。スケジュールはタイトでしたが、帝劇にもミュージカルにも愛着があるし、この時期に盛大なコンサートができるのも本当にうれしいことなので、俳優生活の20年間で培ったノウハウを引き出しに詰め込んで臨んだ感じです。キャストは先輩も後輩も顔見知りなのでやりやすいし、年齢は僕がちょうど真ん中くらいなのでバランスもよいのかな。MCの大役を任せていただいて、ありがたいことです。

ミュージカルマニアの僕から見ても、見どころの多いコンサートです。オープニングの『モルガンお雪』あたりの曲は、ほとんど誰も聴いたことがないのでは。企画の打ち合わせのとき、例えば初期の国産ミュージカルの曲を歌ってみてはどうかと提案したのですが、調べたところ譜面も残っていなくて、『モルガンお雪』に主演された越路吹雪さんの事務所にテープだけがあったそうです。そこから譜面を起こして、演出の小林香さんがレビュー風にアレンジされた曲を公演で歌いました。だから、どういうシチュエーションかもよく分からないで歌っているのですが、当時の空気は感じてもらえると思います。

やっぱり今があるのは、過去の積み重ね。東宝ミュージカルがどんな変遷をたどって今に至ったかの歴史を知るのは大事なことだと思うので、今回それができてよかった。ちなみに演出の小林さんは女性ですが、長い帝劇の歴史で女性がコンサートを演出するのは今回が初めてだそうです。それもまた意義のあることだと思います。

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