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英国演劇の伝統 ストーリーは流れ続ける(井上芳雄)

第31回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。『ナイツ・テイル-騎士物語-』の大阪公演が10月15日で千秋楽を迎えます。東京、大阪と2カ月にわたる長期公演だっただけに、終わりが近づくとやはりさびしいですね。今回、パラモンという騎士の役を演じてきて思うのは、言葉でストーリーをしっかり伝えることの大切さ。それは英国演劇の伝統でもあると感じています。

『エリザベート』などの演出家、小池修一郎さんが見に来こられたときに、「ロンドンでお芝居を見ているようだった」と言われました。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーがやっている、シェイクスピア劇に音楽をつけた作品を思い出したと。演出家のジョン・ケアードはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの名誉アソシエイト・ディレクターとして、数多くのシェイクスピア劇や古典、新作劇を手がけています。なので、今回は帝国劇場という大劇場での上演でしたが、ロンドンと同じような試みをしたのかなと思いました

演じていて感じるのは、とても演劇的というか、特に英国演劇の伝統がしっかり息づいていること。そのひとつに、ストーリーが途切れずに、流れ続けることがあります。

『ナイツ・テイル』はミュージカルですが、基本的に俳優が歌い終わったときにお客さまからワーッと拍手が来るような作りではありません。逆に、静かな曲でも拍手が来る演出というのはあると思います。例えば主役が正面に来て、周りの人が主役をぱっと指して終わったりすれば拍手が来るし、歌もジャンと終わると大きな拍手が来ます。でもジョンは、その終わりのジャンが「いらない」と言って、カットしてしまう。だから1曲終わっても俳優の動きは止まることはなく、そのまま自然に次の場面へとつながっていきます。

そういう演出を間近で見たり、ジョンは歌い上げる曲があまり好きじゃないことなどを考えたりすると、ジョンはストーリーが途切れないことを何より大事にしているのです。

稽古中にも、それを強く感じた出来事がありました。ジョンはいつも穏やかで、怒ったりもしないのですが、僕は1回だけ怒られたことがあります。

「言葉を伝えてほしい」

最後の通し稽古のときです。実際の舞台上ではなく、稽古場に椅子を円形に並べて、そこで稽古をすることになりました。「この形だと、今までやってきた動きや振りはそのままできないし、やらなくていい。新しい気持ちでやってみよう」とジョンが言いました。僕は、「そうか。今日は自由にやっていいんだ」と思い、最初は普通にやっていたのですが、だんだんアドリブを入れてみました。本来は絡まない人と絡んでみたり、自分が歌わない場面で歌ったり。そうしたら、周りは大爆笑。僕も内心で「受けた!」と、調子にのっていろいろやっていたら、ジョンが突然「ノー!」と叫んだのです。そして、「真剣に物語を語ってください」と言いました。

僕はしゅんとなって、またいつものように稽古を通したのですが、それでジョンのやりたいことがよく分わかりました。どんな特殊な状況でも、しっかりとストーリーを伝えることが俳優の役割。それを徹底させるのが、ジョンの演出なのだと。

僕は勝手に自分の考える面白さを付け加えていて、稽古場だからそれも許されると思っていたのですが、ジョンはそれを許さなかった。「とにかく物語を語ってほしい。言葉を伝えてほしい」と繰り返し言っていました。

もしかしたら、それは日本と英国の芝居に対する考え方の違いかもしれません。日本では、何か面白くしようと役者なりに頑張ってみれば、それが芸と呼ばれ、評価もされるところがあると思います。僕にも大いにそういう面があります。でもジョンは、脚本通りに真剣に演じれば、それで自然に面白くなるんだというスタンスだし、実際にできあがった舞台もそうなっていました。

その根底にあるのが、演劇は言葉で語るもので、ストーリーを伝えることが一番大事なのだという考え方。それは英国演劇の良き伝統でもあるのだろう、と感じています。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP社)。10月27日、11月29日に「井上芳雄 by MYSELF スペシャルライブ」を東京国際フォーラムにて開催。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。10月20日(土)は休載。第32回は11月3日(土)の予定です。

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