『今日俺』福田雄一監督 「夏休みにやれてよかった」

日経エンタテインメント!

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7月17日に公開された映画『今日から俺は!! 劇場版』が大ヒットしている。興行収入30億円を超えて、最終的には50億円も狙えそうな勢いだ。2018年10月期に日本テレビ系で放送されたドラマ版に続いてメガホンをとった福田雄一監督が、映画化に際しての熱い思いを語ってくれた。

『今日から俺は!! 劇場版』 1980年代のツッパリたちの高校生活を描いた西森博之の同名コミックをドラマ化した『今日から俺は!!』の劇場版。ドラマに引き続き福田雄一が脚本・監督(公開中/東宝配給) (c)西森博之/小学館 (c)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会
福田雄一 1968年生まれ、栃木県出身。放送作家、脚本家などを経て、2009年に映画監督デビュー。代表作はテレビドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズ、映画『銀魂』シリーズなど。連続ドラマ『親バカ青春白書』(日本テレビ系)が放送中。12月に映画『新解釈・三國志』も控える(写真:中村嘉昭)

『今日から俺は!!』(以下『今日俺』)の原作は、1980年代のツッパリたちの高校生活を描いた西森博之の同名コミック。丈の短い学ランにボンタン、金髪にリーゼントと、インターネットも携帯電話もない時代の若者たちの恋と青春、男気と人情、そして笑いにあふれた日々を、福田監督がドラマ化。勝つためなら何でもするひきょう者の三橋貴志(賀来賢人)と曲がったことが嫌いな伊藤真司(伊藤健太郎)の名コンビぶりが人気を呼び、18年10月期の全ドラマ中で視聴率1位となる大金星を上げた。

福田監督にとっては「ドラマで初めて数字という手応えを感じることができた作品」、賀来賢人ら俳優陣にとっては、その後の他作品でのキャスティングの重みに変化が表れる出世作となった『今日俺』が、劇場版となって帰ってきた。日本テレビ高明希プロデューサーは「映画化が最終決定したのは、昨年の3月頃です」と明かす。

「『映画化したいね』という思いはドラマ時から全キャスト・スタッフが抱いていましたが、“やりたい”のと“やれる”のは違うと言いますか(笑)。福田さんと本格的に映画について進めていきましょうとなったのが18年の年末で、ドラマを経て飛ぶ鳥を落とす勢いになっていたキャストのみなさんのスケジュールなども含めた全ての調整が整ったのが3月。ちょうど1カ月後に『「今日から俺は!!」イッキ見祭り』のイベントが予定されていたので、せっかくならみなさんが集まる場でお伝えしたいと考えて、急ピッチで各所に調整をかけた記憶があります(笑)」

ほぼ1日で劇場版の台本を書き上げる

劇場版で描かれる原作エピソードの候補として挙がったのが、隣町の極悪高校が三橋たちの町に学校ごと引っ越してきたことから騒動が勃発する「北根壊(ほくねい)編」。原作ファンのなかでも名作として語り継がれているエピソードだが、今回の映画では「北根壊高校vs三橋&伊藤」だった図を「北根壊高校vs軟葉高校&開久高校」に変更。ドラマで敵だった開久高校の片桐智司(鈴木伸之)と相良猛(磯村勇斗)が今度は三橋たちと共闘を……という、ドラマファンにとっても歓喜する構図を作り上げた。高プロデューサーいわく、昨年4月の映画発表の時点で既に劇場版の台本の第1稿が完成。福田はほぼ1日で書き上げていたそうだ。

「映画は連ドラよりも若干、子どもが見るにはハードなものになってはいるんですけど、基本的には変わっていないです。いわゆる勧善懲悪な、最後に正義の味方が悪者をやっつけるということで終わるという路線はそのままなので。

僕は中村倫也が出てきた5話がシステム的に大好きなんですよ。あの回も中村倫也が演じる東京者が開久高校に手を出しちゃって、さらに三橋も敵に回して。最終的には開久と三橋が力を合わせて東京者をやっつけるんですけど、そういう敵同士が力を合わせて1つの悪をやっつけに行くという形が非常にシステム的に映画に向いているなと思ったんです。

正直、本当に生意気なことを言うようなんですけど、僕は続編か映画化は当然だと思っていたので。そうなったときに取り上げるとしたら原作のなかでもエピソードが長い『北根壊編』だなと思っていたんです。その上で5話のような形が取れるものが何かないかなと考えたら、“北根壊編に開久も加わって、みんなでやっつけたらいいかもな”と」(福田監督。以下同)

その要素を加えたことで、福田いわく「ドラマで子どもたちに火を付けた要因になった」という登場人物たちの“ヒーロー感”がさらに増した。

「子どもたちから見ると金髪で見たこともない格好をして悪をやっつけるお兄ちゃんたちは、『仮面ライダー』のような正義の味方に思えるんじゃないかと思うんです。そういう意味でも、映画で智司と相良が開久の生徒たちと一緒に乱闘の場に現れるシーンは、1番の“待ってました感”が出たものになったんじゃないかなと思いますね」

思いもよらなかった方法で反撃してくる三橋の“ぶっ飛びヒーロー具合”は世代を問わずテンションが上がる。それにあきれながらも結果ノッてしまう伊藤とのコンビぶりも見どころ (c)西森博之/小学館 (c)2020「今日から俺は!!劇場版」製作委員会

そして、そのヒーローたちが全力でフザけて大暴れしていることも、今作が子どもたちをはじめ幅広い世代に受け入れられた要因だ。17、18年の『銀魂』シリーズ同様、“夏といえば思い切り笑える福田作品”というイメージも強い。新型コロナウイルスの影響で影を落としたエンタテインメント業界にとっても、7月にこの『今日から俺は!!』が公開されたことは1つの大きな転機に捉えられる。

「まずは夏にやれてよかったです。ちゃんと子どもたちが行ける夏休みの時期に公開できるというのは、ちょっとうれしいですよね。劇場に一度に入れる人数には限りがあると思いますが、その分、どの映画館に行っても『今日俺』がやっている環境にしていただくということで(笑)。

これまでにも幼稚園から高校まで、いろんな卒業式でこのドラマのオープニングテーマ『男の勲章』を踊りましたという映像を見せていただきました。また、自分の子どもがあるイベントに出るのに寝坊してしまい慌てて車で送っていたら、ちょうどブラスバンドの一団が渋谷の道を渡っているのに遭遇して、僕の車の後ろから付いてくる形になったんですけど、そのときにブラスバンドが弾いていた曲が、『男の勲章』だったんですよ。まさかの自分のドラマの曲にものすごいプレッシャーを与えられながら車を走らせるという厳しい状況に追い込まれたわけですが(笑)、こんなにも浸透したんだなと。また劇場で『男の勲章』を歌い踊ってほしいですし、映画版には、さらなるお楽しみのシーンも用意しています。楽しみにしていてもらいたいですね」

(ライター 松木智恵)

[日経エンタテインメント! 2020年8月号の記事を再構成]

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