作品の講評はせず「どうしてこうしたのか」を聞く

(イラスト=PIXTA)

保育園や学校で作った子どもの作品、皆さんはどうしていますか?

実はこれこそ、家庭でできるアート教育の第一歩だと大泉さん。

「子どもが園や学校で描いたり作ったりした作品があったら、ぜひ、リビングなどいつでも家族が目にする場所に飾って、その作品について親子で対話するように意識してください。作品を飾ると、親が自分に関心を持っていることが実感できるため、子どもの自己肯定感が高まりますし、何を表現したのかを聞くことで、子どもも『自分が何にこだわっているのか』を自覚することができます」

その際、気を付けたいのが、「作品の講評をしない」ということ。「講評する代わりに、どうしてこうしたのか教えて、と聞くことで、子どもの論理的思考力を鍛えることにつながります」

作品をよく見るということが大事

(イラスト=PIXTA)

アート教育の分野で、近年注目されているのが、アート作品を通じて鑑賞者・学習者の「観察力」「批判的思考力」「コミュニケーション力」などを育成する教育カリキュラム、「対話型鑑賞(VTS)」です。

「VTSは1980年代半ばに、アメリカのニューヨーク近代美術館で子ども向けに開発された美術の鑑賞法です。日本においても20年ほど前から教育普及プログラムの一環として各美術館で行われたり、学校教育の現場などで取り入れられたりするようになりました。作品を見て発見したことや気づいたことを伝え合ったり、そこから想像したことなどを基に、話し合いをしたりすることを通じて、想像力や自分で考える力を育てることができます。美術についての特別な知識も必要ありません」

このVTSは家庭でも行うことができそうです。

「親子で行う場合に役立つのが、美術館が扱っている『アートカード』です。『アートカード』は各美術館が所蔵する絵画や彫刻などの美術作品をカード化しているもので、鑑賞のための教材として学校で使われることが多いのですが、家庭でも使いやすいんです」

親子で「アートカード」を見ながら、「どんなものが見える?」「どこからそう思うの?」などと質問し合ったり、それに対して「自分はこう思う」という意見を伝え合ったりすることで、コミュニケーション能力が高まりますと大泉さん。

「VTSにおいては、作品を『よく見る』ということが大事なのですが、実はその意味では、子どものほうがたけていることも多いんですよ。国立美術館の公式サイトで販売している『アートカード』を入手してみたり、美術館のウェブサイトで所蔵作品の画像にアクセスしてみたり、アート雑誌や画集を購入したり、家で親子で取り組めることはたくさんあります。ぜひ、試してみてください」

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美術館の子ども向けのアート教育プログラムを活用