関水渚 見ているだけで優しい気持ちになる醤油さし
2019年の映画『町田くんの世界』で数多くの新人賞に輝き、今年は『カイジ ファイナルゲーム』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』など話題作に起用が相次いでいる新進女優の関水渚さん。22歳の彼女が見せてくれたのは、陶芸家・増田光さん作の醤油(しょうゆ)さしだった。
見るだけで癒やされる、シロクマの醤油さし
「クマがクマの帽子をかぶって、醤油さしになっていて。かわいくないですか? 私は陶芸には詳しいわけじゃないんですけど、この増田光さんの作品だけはすごく好きで。動物をかたどった作品が多くて、見ていて優しい気持ちになれるんです」
「増田さんのことは、たぶん何かの記事を読んで、興味を持ったんだと思います。それで1年半くらい前に個展に行ったら、なんだか変わった曲が流れていて、スクリーンからクマが大量に流れてきて(笑)。増田さんの世界がじわりじわりと染みてきて、すっかりハマっちゃいました」
「その時、ギャラリーで買ったのが、この醤油さしなんです。値段は4000~5000円だったかな。作家さんの作品ですけど、手が届く値段だったので、1つ選んで。これにした理由は、このクマが、めちゃくちゃ輝いていたから(笑)。それに、何か訴えかけている気がしません? ぬいぐるみとかと同じように、『何か言っているんだろうな』と思うんです」
増田さんは1985年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、愛知県常滑市で創作を続けている陶芸家だ。ライオンや鳥など、さまざまな動物をモチーフに食器やオブジェを制作しているが、なかでも人気なのが、愛嬌(あいきょう)たっぷりのクマのシリーズだ。
「私、クマが好きなんです。特にシロクマが好き。増田さんのシロクマは、みんな表情が違うんですよ。繊細で、本当に生きている感じがするのが好きなところです」
「今年も都内で個展があったので行ったんですけど、開場してから2時間くらいしかたっていないのに、もう買えるものがあまり残っていなくて。その時は、コアラのお皿を買いました」
「醤油さしもお皿も、もったいなくて使えない。部屋の棚に飾って、見て、ただただ癒やされています」
ダー子とマレーシア料理に感動
7月23日公開の出演映画は、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』。18年に連ドラとして産声を上げ、19年に劇場版が公開されて大ヒットした人気シリーズの映画第2弾だ。関水さんは、長澤まさみさん演じる詐欺師のダー子に拾われ、シンガポールの大富豪の隠し子に仕立てあげられる内気な少女・コックリを演じている。
「お話をいただいた時は、びっくりしました。人気の作品で、コックリは物語のキーパーソンになる役。先輩たちのお芝居についていけるよう、がんばらないといけないと思いました」
「コックリは、ダー子さんと一緒にいることで成長していく女の子なんです。現場では、ダー子役のまさみちゃんとお芝居をさせていただく時間が多かったので、すごく勉強になりました。例えば「全裸で泳ごうぜ!」というダー子のセリフがあるんですけど、それを「そうやって言うんだ!」とびっくりするような面白い言い方をされていて、感動しましたね」
「不安だったのは、英語を話すシーン。お手本の音声を聞いて覚えていったんですけど、実際に話すと、発音が全然違ったみたいなんですよ。それで英語を話せるまさみちゃんや白濱亜嵐さん、ビビアン・スーさん、スタッフさんや現地の方々にも教えていただいて。みなさまの支えもあって、なんとか乗り越えられました」
マレーシアのランカウイ島や首都・クアラルンプールで約半月間の海外ロケ。現地で印象に残っているローカルフードは、屋台で食べた「チリパンミー」だという。
「撮影が終わった後、ほぼ毎日、まさみちゃんがお食事に連れていってくださったんです。最初に行った屋台で食べたのが、うどんのような、うどんじゃないような麺のチリパンミー。上に何がかかっているかも分からないんですけど、すごくおいしいんですよ。しかも何百円かで食べられて、安い。毎日、食事をしながらいろんなおしゃべりをできて、楽しかったです」
「完成した映画は、キャストの先輩方がみなさん魅力的で、ダー子、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の3人の掛け合いが特に楽しい作品になっています。そしてやっぱりいいのが、ダー子さんの表情。コロコロ変わって、ユニークで。これまでの作品も公開が楽しみでしたが、今回は『あと何日寝たら公開だ!』って、遠足に行く前の小学生みたいに楽しみでした(笑)。コックリの成長も含め、心から見ていただきたいと思っています」
「欲しい!」と思ったモノしか買わない
15年に、ホリプロタレントスカウトキャラバンのファイナリストに選ばれて芸能界入り。19年、1000人を超えるオーディションを経て『町田くんの世界』のヒロインに選ばれてから追い風が吹いている。この1年で、買い物の仕方にも変化があったという。
「安くてまあまあ欲しいものと、高くても一目ぼれしたものだったら、確実に一目ぼれしたものを買おう……というか、一目ぼれしたもの以外は、買うのをやめようと思うようになりました。なぜだか分からないんですけど、最近、妥協ができない性格になってきたんですよ。だから服やカバン、アクセサリーなどは、直感でピンと来て、『絶対、これじゃなきゃイヤだ』っていうものしか買わない。部屋には、モノが増えなくなりました」
最近直感に働きかけてきたモノは、セットアップの洋服(上下そろいのスーツ)だという。
「前から、青っぽい色がカワイイなと思っていたんです。でも、ちょっと高いから『また今度にしよう』っていうのを繰り返していて。だけど、もし売れてなくなったら後悔しそうだから、思いきって買いました。けっこう心配性なんですよね。マレーシアロケに行く時も、『洗濯できなくなったら、どうしょう』と不安になって、Tシャツを無駄に何十枚も持って行きました(笑)。もちろんクマの醤油さしは置いていきました。割れたら、絶対にイヤなので!」
「最近、枕を新しくしたんです。自分に合わせて作ってくれるお店で買ったら、すごく良くて。そのお店に、寝心地のいいマットレスが置いてあったんです。今欲しいのは、そのマットレス。もし願いがかなうなら、毎日、あの上で寝たいです」
1998年生まれ、神奈川県出身。2015年、第40回ホリプロタレントスカウトキャラバンのファイナリストに選出され、17年に「アクエリアス」のCMでデビュー。19年、『町田くんの世界』で映画初主演。キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞をはじめ、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールなど、多くの新人賞を受賞した。以降の主な出演映画に『カイジ ファイナルゲーム』『コンフィデンスマンJP プリンセス編』、ドラマに『4分間のマリーゴールド』『知らなくていいコト』などがある。
『コンフィデンスマンJP プリンセス編』
シンガポールの大富豪レイモンド・フウが死去し、遺産相続をめぐってフウ三姉弟が火花を散らす。しかし遺言書に書かれていた相続人は、誰も存在を知らない隠し子の「ミシェル・フウ」。それを知った天才詐欺師のダー子は、身寄りのない内気な少女・コックリをミシェルに仕立て、その母親となってフウ家に潜り込む。監督・田中亮 / 脚本・古沢良太 / 出演・長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、小日向文世、織田梨沙、関水渚、ビビアン・スー、白濱亜嵐、古川雄大、柴田恭兵、北大路欣也、竹内結子、三浦春馬、広末涼子、江口洋介ほか。7月23日(木)全国ロードショー
(文 泊貴洋、写真 藤本和史)
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