伊岐会長は「期限を延ばしても現状施策の延長線上では、女性管理職比率30%の実現は困難」と見ます。業種や企業によって女性社員比率は異なります。30%を一律に求めず、実態に合わせて個別に目標値を定め、実現を迫るべきだと提案します。「人口減が深刻な日本で女性登用は欠かせません。経営者は危機感を持つべきです」

伊岐典子・21世紀職業財団会長「仕事を任せ、育てる意識を」

働く女性は増えてきたものの、管理職はいまだに男性が多数を占めています。政府は2013年以降、女性活躍推進の旗を振り、企業に女性登用を促していますが、思うような成果はでていません。どうすれば女性管理職比率30%が達成できるのか。企業の女性活躍を支援する公益財団法人21世紀職業財団の伊岐典子会長に聞きました。

――そもそも、なぜ女性活躍を進めなくてはいけないのですか?

伊岐典子・21世紀職業財団会長

「女性活躍推進を『女性のための取り組み』と理解している方もいますが、大きな誤りです。確かに1985年制定の男女雇用機会均等法は基本的人権の視点から職場における男女差別を問題にしています。社会正義として男女均等に取り組むべきだとする立場です。この大前提は今も変わっていませんが、現下の女性活躍推進には、社会正義に加えて経済的な要請が大きいという点がかつてと違っています」

「日本の少子化は深刻な状態で、人口減少に歯止めがかかっていません。人材の有効活用が日本経済の今後に不可欠なのです。女性にしっかりと働いてもらわないと経済活動を支える労働力が足りませんし、その能力を存分に発揮してもらわないとグローバル競争下で勝ち残れない時代になっています。女性登用を含むダイバーシティ(人材の多様性)を実現しないと、日本の産業も企業も内外の優秀な人材を惹きつけてその力を成果に結びつけることができず、世界で通用しなくなると思います」

――20年までに30%を目指した目標はほぼ達成不可能です。多くの理由が考えられますが、その中でも企業経営者の姿勢をどう評価しますか?

「企業経営者にも積極的に取り組む姿勢があったとは言えませんでした。ほかにもいくつも経営課題があるので仕方ない面もありますが、女性登用を本気で最優先課題に据える経営者は極めて少数だったと思います。SDGs(持続的開発目標)を尊重した企業経営が求められる世界的な流れを意識したり、対外的にダイバーシティ推進の姿勢を示したりする経営者は多いのですが、女性を活躍させることが自社の発展に必須だと本当に理解している方が少ない印象です」

「女性活躍推進は『女性のため』『社会正義実現のため』と言った認識にとどまっている経営者が今も多く、そういう方々の中には、数値目標の達成を目指して女性の管理職候補者の育成に力を入れたり、特別な配慮をしたりすることを『逆差別』にならないかと躊躇(ちゅうちょ)し、ただ男性と同等に扱えばよいとする方もいるように思います。先述したとおり、女性活躍はいまや重要な経営課題。トップが意識を変えて動かないと、企業は変わりません」

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