以前「女性がイタいと感じる男のデート服」という記事の中で、女性はデートのときに男性のどんな服装に「痛い」と感じるかについて下記の3点を上げました。

(1)こちらに全然気を使ってくれてなくて痛い

(2)がんばり過ぎのおしゃれが痛い

(3)TPOに合わないので大人として痛い

この3点はニューノーマルでは、さらに大事なポイントとなるでしょう。ウイルス禍が続けば、同じ空間で人と対面する機会はますます貴重になり、会う時に服装に込める思いは大切になります。

今はこれに「清潔感」が特に加わる時期です。清潔感を感じにくいということは、理性を超えた不安を相手や周囲に与えます。きちんと清潔に見えることはマストの条件。それにはスーツやかちっとしたジャケットスタイルが、やはりいちばんおすすめしたいものです。

女性は男性のスーツ姿やジャケット姿を非常に好みます。きりっと見えて男性ならではの「色気」がありますので。現在の状況下と季節では、スーツにしてもジャケパンにしても軽量で涼し気な素材が妥当だと思います。色味や大きな柄が入っている生地よりも、ベーシックな色や柄、例えばスーツやジャケットならネイビーやグレーの無地か同系色の細かいストライプやチェックなどが涼し気です。

デートでの笑顔は相手への信頼感から(写真はイメージ)=PIXTA

女性の多くはそういったベーシックなものに、白やサックスブルーのシャツという合わせ方を好みますし、ネクタイならブルーやグレー基調に少し差し色が入ったようなネクタイがおしゃれだと感じます。

「お付き合いするならセンスのいい人であってほしいけど、『センス』というと『凝りまくったオシャレ』だと勘違いする人が多いんですよね。本当は自然に『何だかいいな』と感じることだと思うのですが」と残念そうに言った女性がいらっしゃいました。清潔感が重視される今は特にそんな勘違いは損するばかりかもしれません。

柔軟に礼儀正しく

デート場所にもニューノーマルならではの制約が残っています。手指消毒や検温への協力、レストランでの間引かれた席やビニールシートなど「ああ、前とはやはり違っているんだな」と感じる要素がいっぱいです。

「どうテーブルにつけばいいか、迷いますよね」。こうおっしゃる方は多いです。まずは店側の配慮に従うことが必要です。はす向かいや、一つ置きに座ったりすることを求められればそうすべきでしょう。とあるレストランでは、換気を重視して会食用の個室をしばらくの間は使わないそうです。そのような決め事はあらかじめきちんと説明を聞きましょう。

エスコートの仕方でも考慮が必要なことがあります。レディーファーストのルールでは、女性に「上席」を勧め、女性が着席したあとに男性が着席します。ただ、最近は女性に「安心だと感じる席へどうぞ」と言って選ばせる男性もいます。あらかじめ決められた「上席」に座ることもお客様の入り具合などによっては女性が不安に感じることがあるためです。これはニューノーマルにあった優しい女性への接し方だと思います。

マナーとして新たに加わったのは「マスク」の扱い方です。自分が外したマスクを無造作に他の人の近くや他の人の目につきやすいところに置くのは、お互いの安全や安心を考えると、これはマナー違反と言わざるを得ません。現在は外したマスクを入れて保管する「マスクケース」を持参する人が多く見られ、レストランでもお客様用に用意しているところが増えています。外したマスクはそのようなものに入れて、人の目につきにくいところに置いておくのが正解です。

「会食に行ったときにマスクはいつ外せば適切なのでしょうか?」こんな質問をされることもあります。まだ最初の頃のデートをしているカップルも困っているところかもしれません。どのタイミングでもそれほど大勢に影響がないようであれば、お互いの心理的な安心を考えて、食事開始ぎりぎりくらいまで待つことをおすすめしています。

前例が見つけにくい今は、お互いに気持ちよく過ごせるように、とにかく相手や周囲の安心や安全に配慮し、考えて判断していくほかありません。もともとマナーはそうしてできたものですが、今は特にそのような姿勢が大事なときです。

「がっかりしました。もうイヤ」

お互いが気持ちよく過ごせるように考えるべき時期に、配慮のない振る舞いを見せられるとがっかりします。今までお聞きした、飲食店デートでのがっかりシーンを列挙してみましょう。あなたは大丈夫ですよね。

「おしぼりで顔や首を拭いているのを見て、かなりぞっとしました」

おしぼりはもともと手をぬぐうためだけに用意されているもので、顔や首を拭くというのはマナー違反に数えられていました。今は衛生観念の高まりから、ごしごしと顔や手を拭く人に強い生理的嫌悪感を持つ人が増えているようです。一緒に飲食店に行き、男性がそうする光景を見てしまった女性は、拭いたあとのおしぼりを目の前におかれ、食欲もうせたとのこと。いちどそのよう嫌悪感を感じさせるとリカバリーがかなり難しいことは覚えておいてください。

「二度と一緒に来たくないと思いました」

デートしはじめの男性とカフェに行った女性の言葉です。その男性は「こちらです」と示された席で座る前に「暑いなー」と立ったまま上着をバサッと脱ぎ、隣や後ろの席の人の顔や髪に風がかかり、皆が思わず眉をひそめたそうです。そうした振る舞いはふだんでも失礼な行為。まして、誰もが衛生にピリピリしている時に、無神経だと感じたといいます。もちろん、二度とその男性の誘いには応じないことにしました。

ほかにも、「せきエチケットを知らない」「ハンカチ持っていない」というささいなことで、相手を敬遠してしまったという話を聞きました。

一方で、女性が男性に対して「いいな」と思うのもささいなことです。例えば、飲食店で案内されて、隣のテーブルの脇を通る際に「失礼します」とつぶやいてそのテーブルの人たちに軽く会釈をした男性を見て「礼儀正しい優しい人だな」と好印象を持った、という女性がいました。テーブルの人たちも、軽く会釈を返し、そのおかげでその場の雰囲気がぱっと明るくなるように感じたそうです。

飲食店など公共的な場所では、女性は自分への配慮はもちろんうれしいと感じますが、それ以上に一緒にいる男性が周囲への配慮ができる人であることを期待します。その期待を裏切るような無神経な行動や粗雑な行動には厳しい眼を向けます。逆に、周囲への配慮ができる人に対しては、好感を持ち「大人だな」と敬意を感じる人が多いのです。

いかがでしょうか。もともとささいなことで印象は変わり、好き嫌いもよく左右されるものですが、この誰もがとまどい不安な状況ではよりインパクトが強くなっています。周囲への気づかいや節度が感じられる振る舞いや態度は、仕事でも恋愛でも婚活でもこれからさらに必要になる、「できる男」にはマストな心得なのです。

丸山ゆ利絵
 ホテル西洋銀座やアークヒルズクラブなどを経て2010年、経営者などに「ふさわしい存在感」の演出方法を助言するコンサルティング会社、アテインメンツ(大阪市)を設立、代表に就任。15年、ビジネスマンに正しいスーツの着方を指南する「スーツ塾」を開講。 著書に「『一流の存在感』がある人の振る舞いのルール」(日本実業出版社)など。

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