『ジュラシック・パーク』の毒吐き恐竜 実はこんな姿

日経ナショナル ジオグラフィック社

1950年代初期、米カリフォルニア大学バークレー校で、ディロフォサウルスの骨格の復元を監督するワン・ラングストン・ジュニア氏(TEXAS VERTEBRATE PALEONTOLOGY COLLECTIONS)

とさかを持った美しい恐竜

『ジュラシック・パーク』に登場するディロフォサウルスの特徴で正しく描かれていたのは、鼻の上から頭にかけて生えていた一対のとさかだ。生きていたときのとさかは明るい色をして、クジャクの羽やシカの角のように、メスの気を引いたり、ライバルを威嚇したりするためのものだったと考えられる。

「とても魅力的な動物です。2枚の薄い骨でできたとさかは、鼻孔から眼窩の上を通って頭頂部まで伸びていました」と、マコビッキー氏は言う。

薄い骨と言ってもその構造は独特だ。内部がハチの巣状に穴が開いているおかげで、骨全体が強化され、保護されている。さらにその構造は、頭蓋やその他の骨にも広がっていた。ディロフォサウルスの祖先は、こうして軽い骨格を発達させていたのであろうことを示唆している。つまり、体が巨大化しても、自分の体重によって動きが制限されることなく、北米で初めての大型肉食恐竜に成長できたのだ。

さらに、とさかの空洞は鼻腔につながり、現生鳥類であるグンカンドリの喉袋のような、ディスプレーのために膨らませることができる空気袋がついていた可能性がある。ただし、この仮説に関しては他の古生物学者による検証が必要だと、マーシュ氏は断っている。

三畳紀からジュラ紀に入るころ、恐竜は突如として大型化した。そのころ巨大な肉食動物だったワニの仲間が姿を消し、代わってディロフォサウルス、クリョロフォサウルス、その他中国やアルゼンチンで発見された近縁のとさかをもつ恐竜が出現した。「空席になった食物連鎖の頂点の座を、とさかをもつ恐竜たちが目ざとく見つけて奪い取ったのでしょう」と、マーシュ氏は言う。

初めのころこそ繁栄したものの、数千万年というとさかをもつ恐竜の時代は、進化の歴史のなかではわずかな期間にすぎなかった。その後、ケラトサウルスやアロサウルスが主流となる。このころから、恐竜たちはとさかではなく羽毛を生やし始める。自分の力や魅力を誇示するには羽毛の方が効果的で、生物学的にも効率的だったのだろう。

「ディロフォサウルスは、ジュラ紀初期の獣脚類を理解するうえで重要な存在です」と、マコビッキー氏は言う。「けれど、それを描いた小説や映画は長い間、時代遅れの情報のままだったのです」

(文 JOHN PICKRELL、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月10日付]

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