日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/7/31

エクアドルを拠点に爬虫類や両生類の観察ツアーを提供する「トロピカル・ハーピング」の社長で生物学者のアレハンドロ・アルテアガ氏は、映画『エイリアン』のようなアシナシイモリの口でかまれたことが何度もあるという。しかし、「歯が食い込む物理的な痛みを直ちに感じる以外の」問題があったことはないという。

氏は、もしアシナシイモリに毒があるとすれば、捕食者から身を守るためではなく、獲物を捕らえたり消化したりするためだろうという著者らの説に賛成している。

「いつも驚かされるのです」

英スウォンジー大学の進化毒物学者ケビン・アーバックル氏は、アシナシイモリの研究が未開拓であることを考えれば、彼らが攻撃用の毒を持っているというのは「確かにありえる」ことだと言う。

ただし、今回の酵素の分析については「そこまで説得力のある」ものではないと批判する。「どんな口内の分泌腺も、ここに挙げられたものを含め、幅広い酵素を分泌します」。言い換えると、ホスホリパーゼA2の酵素群が唾液に含まれていたとしても、毒ではないかもしれないということだ。

「とはいえ、間違いなく面白い論文ですし、これに刺激されて多くの研究が後に続き、まだ謎の多い脊椎動物についての知見が大いに増えることになるでしょう」と氏は言う。

シェラット氏は、この論文を「確実な貢献」だとしつつ、「答えよりも疑問のほうが多く残る」ものだと評する。

「でも、それがアシナシイモリというものです」とシェラット氏は話す。「彼らにはいつも驚かされるのです」

(文 JASON BITTEL、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年7月8日付]