西表島の海をイメージして開発された、塩で食す塩寿司

製塩は基本的に1人で行っているが、藤本さんには力強い協力者がいる。地域おこし協力隊として西表島に移住したテイアキヒコさんだ。地域おこし協力隊とは、総務省の地方創生のためのメニューで、派遣された地域外の隊員に地域活動を通じて定住・定着を図り、地域力の維持・強化を図ろうという制度だ。

テイさんは2019年に西表島にやってきて、島内の産業を支援したり、島ならではの魅力を島外に発信したりしている。西表島で約100年ぶりに復活した塩づくりに魅力を感じたのが、藤本さんを応援するきっかけになった。

テイさんは料理が得意で、藤本さんも実は調理師専門学校出身。そのため、2人は西表島の塩と食材を使ったメニュー開発にも知恵を絞る。とある日に開催された「男だらけの塩料理教室」で提供されたメニューはこうだ。西表島で獲れた猪(いのしし)の肉を使った「猪肉のスーチカー(塩漬け)」、そこに島内に自生する月桃の葉を加えた「猪肉の月桃葉味噌包み焼き」。海辺で摘んだアーサー(青のり)を用いたゼッポリーニなど、レストラン顔負けのメニューが並んだ。釣りが趣味のテイさんは、西表島の塩で食す塩寿司などの研究にも余念がない。

塩は、製法によって結晶の形や含まれるミネラルバランスが異なり、釜炊き塩と天日結晶塩で味が大きく変わる。西表島の塩釜炊きは、舌触りに影響するカルシウムをある程度除去されているため口溶けがよく、舌の上にのせるとふわっと溶ける。ミネラルもバランス良く含んでいるため、突き刺さるようなしょっぱさがなく、最後に口の中に柔らかい甘味が残るのが特徴。西表島でなめてみた海水そのものの味が残っているように感じる。白身魚や野菜との相性も良い。

一方、天日結晶塩は非常にパワフル。大きく育った立方体の結晶はサクサクとした食感で、力強いしょっぱさと濃厚なうまみ、甘味、そしてスパイシーさもある。牛肉や猪肉、脂ののった豚肉など、肉料理全般と相性が良い。

現在でも定期的にメニュー開発が行われており、その情報は西表島の塩オフィシャルサイトやテイさんのブログで随時公開されている。藤本さんが手がける塩も、オフィシャルサイトの通信販売サイトから購入できるようになっている。「西表島の塩は、口のなかに残る甘味が非常に印象的。こんなに優しい味の塩があるのかと思った。鋭くとがった塩味ではなく深みのある柔らかい味なので、素材のおいしさを引き立ててくれる」とテイさん。東洋のガラパゴス、西表島で約100年ぶりに復活した塩づくりと、その塩と地元食材を使ったメニュー開発。今後の展開が楽しみだ。

(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)

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