日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/6/20

クジラの体格の悪さは、漁具を引きずることによる疲労などが原因であると考えられる。繁殖が遅いのはそのせいだろうと論文の著者らは指摘する。

「タイセイヨウセミクジラが種のレベルで問題を抱えていることはわかっていました」と、論文の共著者で米アンダーソン・キャボット海洋生物センターのクジラ研究チームを率いるピーター・コークロン氏は言う。

「けれども今回の研究で、個体レベルでも問題を抱えていることがわかりました。大規模な介入がなければ、20年後にはいなくなってしまうでしょう」

南より細い北のセミクジラ

クリスチャンセン氏は、世界各地の17人のクジラ研究者と協力して、タイセイヨウセミクジラとミナミセミクジラ計523頭分の空撮写真を収集した。それぞれ子ども、未成熟の個体、成体、授乳中のメスという4つの異なる段階の個体が含まれた。

クリスチャンセン氏のチームは、写真から実物の大きさを推定し、2種のクジラについて体の長さと幅を比較。そこから見積もった体の体積を使って、クジラの「体格指数」、平たく言えば、相対的な太り具合を推測した。

その結果、タイセイヨウセミクジラの未成熟個体、成体、授乳中のメスは、ミナミセミクジラに比べて著しく体格が悪いことが明らかになった。特に、タイセイヨウセミクジラの母親の体格が悪いようだ。

同程度の大きさのミナミセミクジラと比較すると、タイセイヨウセミクジラの母親の体重は平均で20%、約4トンも少なかった。

繁殖の周期に影響か

母クジラが痩せていることは、タイセイヨウセミクジラの減少を説明するのに役立つとクリスチャンセン氏は話す。クジラの出産にはかなりの体力が必要で、母クジラが痩せているほど、回復して次に出産できるようになるまで時間がかかる。

近年では、タイセイヨウセミクジラの出産の間隔は約7年だが、ミナミセミクジラでは3年だ。

「一般的にクジラの体の状態を評価するには、どのくらい太っているかを測定しなければならないので、この研究は非常に重要です」と、米ユタ大学の生物学者でセミクジラの専門家であるビクトリア・ラウントリー氏は言う。なお、氏は今回の研究には参加していない。

「クジラを動物病院に連れていって診察台に載せ、体温を測ることはできませんから」

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