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米東海岸でクジラの「異常死」が急増 船舶と衝突

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

米海洋大気局(NOAA)は2017年4月、米国メーン州からフロリダ州にかけて、ザトウクジラの「異常死事例」が起こっているとの宣言を発表した。2年近く経った今も、宣言は撤回されていない。2016年1月から2019年2月半ばまでに、NOAAが記録したザトウクジラの座礁は88頭。この数字は、2013年から2016年までに座礁したクジラの2倍以上に上る。

ザトウクジラの異常死事例が宣言されたのは2003年以来4回目のことだ。この宣言を出さないと、NOAAは座礁したクジラの調査を追加で行えない。だが、2017年4月の宣言直後に開かれた電話会議では、回答しきれないほどの数の質問が出た。航路にいるクジラが増えているのか、それとも船が増えているのか? 海水温の変化でクジラの獲物が海岸近くに引き寄せられ、そのためクジラも沿岸に集まっているのか? 海の中に広がる雑音(ノイズ)がクジラの方向感覚を狂わせているのか?

初めてではない「異常死」

このとき、NOAAの担当者たちは、早い段階で答えを出すのは「とても難しい」と話していた。過去に3回発生した異常死についても、原因は結局「不明」とされたままだ。

しかし、2016年1月にバージニアビーチ沖で死んだザトウクジラが見つかってから3年経った今、バージニア水族館の科学者たちは、クジラの死因を突き止めたと考えている。「異常死の2つの主な原因は、船との衝突と漁具だというのが結論です」。同館で座礁クジラについての対応を取りまとめているアレクサンダー・コスティディス氏は話す。

だが、それが起こる理由は「少々ややこしい」と、ある研究者は言う。なぜクジラが船に近づいて来るのか、あるいはクジラは船を察知して、多少なりとも避けようとしているのか、科学者たちはまだ解明できていない。

コスティディス氏らのチームは、バージニア州内で死んだクジラは全頭調べ、可能な場合は解剖もしている。ノースカロライナ州での座礁クジラにも必要なら対応している。

座礁クジラの知らせを受けたときの対応は、通常どのようなものかと尋ねると、同水族館の研究コーディネーターであるスーザン・バルコ氏はこう言った。「まず、パニックになります」。クジラが死んでいれば、もう海岸に打ち上げられているのか、あるいはどこの海岸に引き上げれば解剖できるかを、チームが判断する。解剖を行うのは、海沿いの自治体で働く選ばれた職員たちだ。もちろん、彼らにとっても楽しめる仕事ではない。観光客がいる夏の数カ月は特にそうだ。鋭利なナイフを使い、クジラの大きな内臓を取り出す。死骸を運んだり、後で砂浜に埋めたりするのに、建設重機も必要になる。

研究チームは、クジラの死因を判断しようと、スクリューの衝突、擦り傷、骨折など鈍器による外傷の跡を探す。何かとぶつかったのは死後である場合も多い。また、傷が治癒した跡が見つかることもあり、船と衝突したり漁具がからまったりしたあと、回復したことがわかるとバルコ氏は言う。可能なら、クジラの全体的な健康状態を評価し、病原体の有無や、胃の内容物も調べる。潜在的な病気の兆候にも目を光らせている。

「推論できることはありますが、正確とまでは言えません。さらに死体が腐敗しているとなると、単なる憶測になってしまいます」とバルコ氏。

防ぐのは困難

船との衝突を防ぐには、クジラの生態をさらに解明しなくてはならないし、船舶航行に関わる人々にクジラへの意識を高めてもらうことも必要になる。NOAAは、絶滅危惧種であるタイセイヨウセミクジラなど特定の鯨類を守るため、船舶の速度規制を設けており、これはほかのクジラを守るのにも役立っているとみられる。NOAAの規制では、「季節管理エリア」と呼ばれる特定の区域では、全長約20メートル以上の船舶は速度10ノット以下で航行しなければならない。

「予防するのは、かなり難しいですね。まず、クジラのほうも船を察知しなければなりません。次にクジラが船を脅威と認識して、そこから離れるなどの適切な行動をとる必要があります」とバルコ氏は言う。

米デューク大学教授で、海洋保全技術が専門のダグ・ノワチェク氏は、クジラが船の音を聞き取っていることは間違いないとしながら、相次ぐ異常死には他の要因も関わっているかもしれないと話す。クジラやイルカの行動と音響生態学を研究するノワチェク氏は、餌をとっていたり、船の航行音が絶えず聞こえていたりすると、クジラは混乱に陥る可能性があるという。船から警報音を出してはどうかという議論も以前からある。ちょうど車のドライバーが使うシカよけの警笛のようなものだが、ノワチェク氏によれば、効果は保証できないとのことだ。

「クジラは海で最大の生きものです。自然では、おとなのザトウクジラが恐れるものなどいません。だとすれば、聞き慣れない大きな音が聞こえたとしても、それを『聞き慣れない大きな音』以上の何かだとクジラが思える理由はないのです」とノワチェク氏は問う。「要するにクジラを船の音に慣れさせようという話にしかなりません。クジラからしてみれば1回でも船に衝突すれば、それで終わりになってしまいます」

米国で3番目に大きな港であるニューヨーク・ニュージャージー港の広報担当者は、クジラと船舶の遭遇に関する質問について、海上交通路を管轄する沿岸警備隊を引き合いに出した。沿岸警備隊は、全ての船に対してNOAAが定めた規則違反の取締りを行っているという。船舶はあらゆる海洋哺乳類から約91メートル以上離れていなければならず、クジラが近づいてきたときはエンジンをニュートラルにしなければならない。船の乗員が「絶滅危惧種のクジラを目撃した場合、またはクジラと衝突した場合」は報告が求められる。

NOAAによれば、最近の異常死事例の中で最もザトウクジラの座礁が多かったのがニューヨーク州(17件)だった。これに続くのがバージニア州とマサチューセッツ州だ。発見された座礁クジラは、ほぼ全頭が死んでいたと研究者たちは話す。漁具にからまったクジラが自由になり、泳いで沖へ戻り、回復できるほど健康なケースは例外的でごくわずかだそうだ。

クジラの座礁問題に取り組むロングアイランドのボランティア団体、「大西洋海洋保全協会(Atlantic Marine Conservation Society)」の設立者ロブ・ディジョバンニ氏は、沿岸の航路でクジラが好むメンハーデン(ニシンの一種)が増えていると話す。このような航路が、クジラが立ち寄って餌を取る「休憩所」になっているとのことだ。

「人間のほうが、『クジラがいる』ということを意識するべきです」とディジョバンニ氏。「スクールゾーンでは誰でも車のスピードを落として運転しますよね。速度を落としたからといって、生活に大きな支障が出ることなどありません。同じようにすればいいのです。それで、クジラのためにもなるのですから」

NOAAによれば、2019年に入ってから現在までに米国で座礁したクジラは3頭。うち1頭はバージニア州だった。3頭はいずれも死んでいた。

バージニア水族館・海洋科学センターのホエールウォッチング船「アトランティック・エクスプローラー」号の船長、マーク・セダカ氏は、NOAAのガイドラインをすべて守っている。ザトウクジラが海面に出ているときは一定時間を置いて離れる、クジラが近づいてきたら船のエンジンをアイドリングさせるなどだ。特徴的な背びれのクジラが撮影されると、すぐにバージニア水族館のボート事業コーディネーター、アレクシス・ラボン氏のもとに送られ、把握済みのクジラのデータベースと照合される。

ラボン氏が確認した幼いクジラは、その日の午前と1月初めの計2回目撃されていた。地元のホエールウォッチングボートやレクリエーション用ボートが、海面に出たクジラの周囲に居残る中、セダカ氏はアトランティック・エクスプローラー号を北へ向け、航路でクジラの噴気が新たに報告されたところを目指した。コスティディス氏によると、デラウェア湾の浅い海は、より深い航路へクジラを導く狭い通路のようになっているという。

コスティディス氏は、すぐにできる唯一の対策は航行量を減らすことだが、これも「現実的な解ではない」と話す。一方で、スピードを落として航行することには意味があると、コスティディス氏は考えている。

「ある程度は、ですがね」とコスティディス氏は言う。「船の過密な航行と、大都市のすぐ近くにいる沿岸のクジラは、共存できないだろうと私は思います」

(文 JASON NARK、訳 高野夏美、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年3月25日付]

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