おうち時間でふりかけ再評価 「ゆかり」は実は3姉妹

新型コロナウイルスの感染拡大防止のための緊急事態宣言が全都道府県で解除となったが、自宅で過ごすことを推奨する「stay home」「おうち時間」の流れはしばらく続きそうだ。「おうち時間」で昨今注目を浴びているのが「ふりかけ」である。
日持ちして、サッとかけるだけでおいしくご飯が食べられる。1日3度の食事の支度や買い物に頭を悩ませる人にとって、ふりかけはまさに救世主だ。今回はふりかけの定番「ゆかり」と、ちょっとゼイタクなふりかけ、その変わったおいしいアレンジレシピなどを紹介しよう。
コロナの影響でふりかけの販売が好調だという。赤シソのふりかけ「ゆかり」で知られる三島食品(広島市)によれば「弊社は市販用と業務用の両業態へ商品販売しています。市販用は家庭内食の増加などにより、ふりかけの実績が対前年比104%強で推移しています」とのこと。
売り上げがアップしているのは「おうち時間」の影響もあるが、同社のユニークな商品ラインアップが注目されていることも大きい。定番の「ゆかり」が実は「3姉妹だった!」とネット民の間で話題になっているのである。
「ゆかり」が誕生したのは今からちょうど50年前の1970年。
「梅干しと一緒に漬けられた赤シソを刻んだものが東海エリアでよく売れていたことから、ある社員が社長に提案したのがキッカケです。社長ははじめ断っていましたが、その社員が1年間言い続けたことに根負けし、『漬物ではなく、ふりかけだったら開発してもよい』とOKを出しました。納得する品質になるまで試行錯誤を重ね、商品化できるまで1年かかりました」(三島食品お客様相談室)
発売当時はふりかけといえば魚粉などの動物性原料を主体にしたものばかり。原材料が植物のみの「ゆかり」はなかなか売れなかったとのこと。それが学校給食で導入されるようになり、子どもたちが給食で食べた「赤いごはん」を家でも食べたいという声が広まり、徐々に売れるようになったという。




84年には青ジソを使った「かおり」をリリース。
「『ゆかり』が順調に売れ始め、2つ目の柱を作りたい思いから赤シソに対し、青ジソを使ったふりかけとして発売しました。青ジソの香りがよかったことから『かおり』と名付けられました」
2010年には「あかり」も誕生。
「『あかり』はふりかけというより料理素材として提案した商品で、当初カリカリ梅を刻んだ製品と現在のたらこをピリ辛に味付けしたものの2品で販売していました。結果、たらこの方の商品のみが『あかり』として継続販売しています。ホッとする我が家の『灯り』をイメージして名付けました。いずれもひらがな3文字のやわらかさと覚えやすさ親しみやすさをイメージしています」
この3つのパッケージを並べて、2年ほど前に同社がツイッター投稿したところ「3姉妹」と話題に。さらに今年の2月にはカリカリ梅を使った「うめこ」が誕生。「えっ、4姉妹?」「『〇〇り』って名前じゃないのか!」「令和なのに昭和な『しわしわネーム』か!」とまたもやSNS(交流サイト)で盛り上がった。
「『うめこ』は、当初2品あった『あかり』のひとつ、カリカリ梅をもう一度復活させたいと、ある社員から社長に提案しました。それならば『演歌歌手』のイメージでいきたいという社長の意向から、『~り』ではなく『こ』がいいとなり、その瞬間『うめこ』が降りてきました。提案した社員の案とも一致したようで2人で即決したそうです」
こうして出そろった4人。果たして「ゆかり」「かおり」「あかり」「うめこ」の関係は? 生みの親、メーカーとしての見解はどうなのだろうか。
「『ゆかり・かおり・あかり』をご覧になったお客さまが『ゆかり以外の人がいる』『三姉妹のようだ』などとおっしゃっていただいたことで話題が広がり、弊社の見解も三姉妹とさせていただきました。『うめこ』は公式には関係性の設定をしておりません。皆さまに関係性を想像して楽しんでいただければと思っております」
「うめこ」は当初、2品あった「あかり」のうちのひとつだったから、「あかり」の双子の妹? 生き別れていつの間にか消息の途絶えた双子の片割れが「ゆかり3姉妹」のもとに出現!? などと妄想するのも楽しいものである。
ちょっと変わったアレンジレシピについても聞いてみた。
「『ゆかり』は乳製品とも相性が良いのでチーズやバターと合わせたり、バニラアイスクリームにかけたりしていただけます。また、4品共通で、パスタやあえ物以外にも、ポテトサラダに混ぜて味変をしたり、マヨネーズに混ぜてディップソースにしたり、ダイコンおろしに混ぜて変わりおろしとしてもお使いいただけます」

うーん、アイスクリームとはこれまた斬新な! また、海外でも「和食」であるふりかけは注目されているとのこと。「ふりかけ=ご飯」という固定概念がないため、調味料の1つとして肉や魚、サラダやポップコーンなどにも使用されているという。
「固定概念」といえば「ふりかけ=食の細い子どもにご飯を食べさせるもの」といったイメージを覆したのが永谷園の「おとなのふりかけ」シリーズ。「そういえば、大人が食べてもおいしいよね」と思い出させてくれたものだった。


昨年から今年にかけて「トリュフ風味」「旨味(うまみ)からすみ」と、期間限定ながらも「ふりかけらしからぬ」豪華版が立て続けに発売されて、こちらも話題になっている。永谷園ホールディングス広報部によれば、「ふりかけ市場全体が好調ななか、『おとなのふりかけ』シリーズ全体も伸長しています」とのこと。
「『おとなのふりかけ 薫るトリュフ風味』は、2019年10月で発売30周年を迎えた『おとなのふりかけ』の期間限定商品として、『うに風味』に続いて発売しました。いずれもターゲットは50~60代の子供が成長しきったシニア層向けで想定していました。トリュフは外食店でも卵かけごはんやラーメンにトリュフ塩を使用するなど、ちまたでも人気があったことや、『おとな向け』のメニューかつ周年記念のお祝いにも適した食材であると考え、開発メニューとして採用しました」(永谷園ホールディングス広報部)
現在発売されている「旨味からすみ」は、30周年記念商品の2メニューが好調だったことから期間限定での企画商品を続行することになった形である。
「30周年記念商品は想定していたターゲットはもちろん、30~40代の層からの購買率が高かったことが分かりました。『おとな向けのぜいたくな味わい』で、30代以上にもささるメニューを検討した結果、からすみは『食べたことはないけれど、高いものに感じる』というイメージを持つ方が多いのではと考えました。ふりかけであれば手軽に試すことができるため、手に取りやすいだろうと判断し、開発を進めました」
こちらでも、ちょっと変わったアレンジレシピを聞いてみた。
「トーストやサラダのシーズニングなどで使用するのもおすすめですが、『おとなのふりかけ』は風味豊かな『のり』が味わえるのが最大のポイント。『TKG(卵かけごはん)』にするのがかなりお薦めです。『旨味からすみ』はこれに『追いバター』をするとコクがさらにアップします」
イタリア料理に、からすみに似た、ボラやマグロの卵巣を塩漬けにした「ボッタルガ」をパスタにした料理がある。これをパスタにかけてイタリアンを楽しむのもよさそうだ。
「ふりかけ=ごはん」「ふりかけ=子どもの食べ物」といった固定概念をはずし、おうち時間でいろいろなアレンジレシピに挑戦してみようではないか。
(ライター 柏木珠希)
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