非首都圏、Iターン、「出張+リモート」へ

そうした現状から、今後、リモートワークを中心とした働き方を望む人たちは「住環境を整えたい」と考えています。これまでは通勤時間削減のため、会社に近い都心で最低限のスペースで暮らしてきたけれど、郊外の広々とした家で、自分だけの書斎を持つ。ふらっと散歩に出たら、身近に豊かな自然がある――。そんな暮らしへの憧れが強くなっているようです。

そのようにライフスタイルを見つめ直すうち、「首都圏でなくてもいいのではないか」という考えに至り、地方で働くことを選択肢に加える人もいます。私が転職相談を受けるなかで、選択肢の一つとして地方企業の求人案件を紹介すると、「前向きに検討したい」という反応が返ってくることが以前よりも増えました。

例えば、Aさん(50代)の場合、セカンドキャリアとして「1社でフルタイム勤務より、複数の企業で自分の経験を生かしたい」と考え、転職活動を始めました。そこで、九州の企業をご紹介したところ、「転勤で地方都市に勤務したことがあるので、知らない土地に行くことに抵抗はない」とのこと。1カ月のうち、1週間~10日ほど九州で働き、それ以外は東京の企業で働く、という方向で話が進んでいます。

また、すでにIターン転職を果たした人もいます。歴史のある上場企業の経営企画部門で働いていたBさん(40代)は、コロナへの危機感が広がっていた時期、自社の対応の遅さにもどかしさを感じたといいます。以前にベンチャー企業での勤務経験もあったことから、「やはりスピード感があるベンチャーで働きたい」と、4月末での退職を決意。私からは、Bさんの希望に合う求人の選択肢として中国地方にあるベンチャー企業の経営幹部のポジションを紹介しました。

Bさんは東京出身ですが、地方へのIターンも視野に入れて、応募を決意。2回のオンライン面接を経て、緊急事態宣言が全国に拡大される前に現地を訪れて面接を受け、ゴールデンウイーク明けに入社しました。最初は単身赴任ですが、お子さんが高校を卒業後、奥様も引っ越してこられるそうです。

大学時代に地方で暮らした経験があるBさんは、もともと自然豊かな環境や人々の家族的なつながりに魅力を感じていたとのこと。コロナ禍が自分の望むライフスタイルを見つめ直す転機となり、いち早く実行に移したというわけです。

なお、地方の企業も、幹部クラスの人材採用にあたっては必ずしもフルタイム勤務を求めておらず、「出張+リモート」という働き方も受け入れています。

アフターコロナでは、首都圏へのこだわりを捨てた人と地方企業のマッチング事例がさらに増えるかもしれません。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊『マンガでわかる 成功する転職』(池田書店)、『トップコンサルタントが教える 無敵の転職』(新星出版社)ほか、著書多数。

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