手が届きそうな空から撮影 地球の美と痛み、一目瞭然

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/5/31
ナショナルジオグラフィック日本版

サウジアラビアの首都リヤドにある高さ302メートルのキングダムセンター。豊富な石油で成り立つ王国を反映している(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)

モーターパラグライダーを使った低高度撮影の第一人者ジョージ・スタインメッツ氏。同氏が写真家たちに与えた影響は計り知れない。スタインメッツ氏の写真が魅力的なのは、何よりユニークな視点だろう。ナショナル ジオグラフィック誌の特集を担当するロバート・クンジク氏がスタインメッツ作品の魅力を語る。

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私は、PCをしまい、無機質なコーヒーカップを洗い、遅ればせながら机を消毒した。アースデイ自体に思いを馳せ、オフィスに1部だけあったジョージ・スタインメッツ氏の素晴らしい新刊『The Human Planet(人間の惑星)』を手に取った。

中国の江蘇省クイ県で毎年行われるザリガニを食べるお祭りには、何千人もが集まる。ザリガニは高タンパクで、中国では需要の高まりを受け、1990年代から養殖されてきた。クイ県だけでも130平方キロを超える養殖池がある。ザリガニはもともと丈夫なため、殺虫剤は使われていない(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)

それは、ここで紹介する写真を選んでフォトエディターがつけた付箋紙で彩られていた。この導入文を書くため、私にはその本が必要だった。だが、フォトエディターのではなく、私自身のコーヒーテーブルに永遠に飾られることになってしまうかもしれないという漠然とした考えもあった。先が読めない時期にあっては、でき得る限りの機会をつかみ取らなければならない。

米オレゴン州沖50キロほど、65トンものシロガネダラ(メルルーサとも呼ばれる)を漁獲するC/Pアラスカ・オーシャン号。長さ115メートルのトロール工船。乗組員150人が、獲った魚を船上で加工する(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)

第1回のアースデイは1970年のことだった。スタインメッツ氏はまだ12歳。同氏は、第1回アースデイのことをよく覚えていないという。スタインメッツ少年は、米カリフォルニア州ビバリーヒルズの裏庭に生える木々に登り、そこから見る景色が好きだった。当時のカリフォルニアの人口は約2000万人で世界人口は約37億人、現在のちょうど半分ほどだった。

1979年、同氏は、石油探索の仕事に備え地球物理学を学んだスタンフォードを離れ、カメラを携え1年をかけてアフリカ中をヒッチハイクした。7年後、同氏の写真は、ナショナル ジオグラフィックに初めて掲載され、その後、数多くの写真が誌面を飾ることになる。探索は行ったが、石油のためではなかったのだ。

サウジアラビア南部のルブアルハリ砂漠。青々とした円形農場は、それぞれ直径800メートル以上で、砂漠全体に広がる。センターピボット方式の灌漑システムに水を供給する井戸は、深さ200メートル。汲み上げた地下水は、再充填されることがない。つまり、何千年も前に地球に降り注いだ「化石水」を使っている。20年ほどで井戸が枯れ、畑は放棄される。その後、砂漠の砂に再び覆われる(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)
サウジアラビア、アルファウ近くの円形農場の輪に沿って働く労働者。トマトを収穫し、箱詰めして出荷する(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)

ブラジル中央部に近いマットグロッソ州、燃える木から出る煙を通して、朝の日射しが差し込む。ここでは、何千平方キロもの森が焼かれたり伐採されたりして、牛牧場や大豆農場用に土地が開拓されてきた。2000年代中頃の政府の努力により森林破壊は大幅に減少したが、違法伐採や違法農業は2013年から再び増加傾向にある(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)
2017年10月、米カリフォルニア州で発生した山火事「タブスファイア」により、ソノマ郡とナパ郡の総戸数の約4分の1に相当する1400軒を超える家が破壊され、サンタローザのコフィーパーク近郊は事実上壊滅した。この山火事は、個人が所有する施設の電気系統の問題により引き起こされた。気候変動による気温の上昇で、米国の山火事は、頻度と規模が増大すると予想されている(PHOTOGRAPH BY GEORGE STEINMETZ)
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